リナリナ猫瑞希ぱきゅう編【夢現の猫ライド】
第7話「森川由綺」


夢を……夢を見てました。夢の中の人になっていた私は、その人が師の際に立っているいるのを知りました。体中傷つき、巨大な敵意がその身に降りかかろうとしています。私は叫びました。しんじゃう、しんでしまう。なのにその人は決して諦めようとしません。ここで終わられるはずがないと何度も叫んでいたのです……何度も……。


ちゃんらちゃんらら〜 ♪ ちゃんちゃら ♪ ちゃららら〜 ♪

「誰にゃ、どこのどいつにゃ、息を潜め、声を殺し、まばたきもせずにあたしを見つめている。あたしにあたしを回想させる……お前は誰にゃ!」

強制的に脳裏に浮かび上がってくる過去の記憶達。

泣いている子猫の猫瑞希。

「いまさらにゃ」

猫瑞希ママン死亡。

「それがどうしたにゃ」

去っていく理奈の背中。

「過去なんて背負わないにゃ」

血で赤く染まった右手。

「だから……見せるんじゃないにゃ!」



「……にゃ」
「気がついた?」
「にゃっ!」

ドカカアッ!

「ま、待ちなさいよ!」

「そっちから仕掛けといて何言ってるにゃっ!」
「状況を把握しなさい、この馬鹿猫!」

ドコオッ!(ボディブロー)

「げほぉっ!?」

バキィッ!(アッパーカット))

「げふううっ!?」

由綺をマウントポジションで組み敷く猫瑞希。
「ひぃぃぃっ……」
右手で顔を庇う、由綺。
「…………にゃ? ここはどこにゃ?」
「殴る前に気にしなさいよ!」
「お前何やったにゃっ!」
「二人で落ちたのよ!」
「出口はどこにゃ?」
「出口があったらここにはいないわよ!」
「……マジにゃ……」



「こっちは駄目ね。遠回りだけど水路を行くしか……」
「こじ開ければ近道になるにゃ。こんな岩、あたしのアルターで粉々にしてやるにゃ」
「辞めなさいよ! あんた馬鹿でしょう!」
「にゃんだとっ!?」
「この当たりの地盤は脆いのよ。そんなことしたら、命はないわよ。これだからリーフキャラは……」
「お前だと元リーフキャラにゃっ! カーギーに寝返ったチキン野郎のくせに……」
「裏切ったのではなく、私の才能が認められたのよ!」

チャッ!

由綺は発酵するCD(ホワイトアルバムエイト)を1枚作り出す。

「にゃっ!」
猫瑞希は戦闘態勢を取る。
「今、あんたと戦う気はないわよ。私にとっては、ここから出て冬弥君と会うことが大事なのよ」
「冬弥?」
「なんでもないわよ……一つだけ忠告しておくわ、この辺りはドロ地が多い足を取られないようにしなさい」
「ま、待つにゃ……明かり……」


セリオ・クルスガワは楓達から形式的な報告を聞いた後、密かに全てを監視させていた瑠璃子の報告を聞いていた。
「ふむ、面白そうな人材ではありますね……絶対電波(で知覚)続行お願いします、瑠璃子さん」
「くすくす、解ったよ」



「しかし、腹減ったにゃ〜、昨日から何も食べてないにゃ」
「もぐもぐ……」
「て、さりげなく喰ってるんじゃないにゃ!」
「私の食べ物を私がどうしようと、私の勝手でしょ」
「じゃあ、それを奪うのもあたしの勝手にゃ!」
猫瑞希は邪悪に笑う。
「…………」

ポイ!

「にゃ?」
「脱出するまで私の指示に従ってもらうわよ」
「解ったにゃ、もぐもぐ…………不味いにゃ……」
「贅沢な猫ね……」
「すばるの弁当以下の味にゃ……」
「すばる?」
「なんでもないにゃ」



「なんで帰ってこないんですの、猫瑞希ちゃん」



ガシ! ガシ! ガシ! ドゴオオオオオオン!

「どうにゃ、あたしのアルターは ♪」
「力押しだけの単調な能力、あんたの性格をよく現してるわね」
「悪かったにゃ……」
「早く地上に出る出口を見つけないと……て、何何やってるのよ?」
「食糧にゃ! 食糧 ♪」
猫瑞希は大量の缶詰を発見した。
「まだ食べる気?……だいたいもう賞味期限過ぎてるわよ」

プシュウッ!

缶詰から腐敗した汚い液体が噴き出す。

「うにゃあっ! 汚いにゃあっ!」
「あんた、殴ること以外はまったくの無能ね……」
「にゃあ?」
「クズ猫って言ったのよ」
「良い返事にゃ、かなりキレるにゃ……」
猫瑞希は由綺の襟首を掴む。
「野蛮ね……」
「だったら、見下した言い方するんじゃないにゃ!」
「言ったでしょ、脱出するまでは余計な力を使いたくないって」
「けっ!」
猫瑞希は由綺の襟首を離した。


「一つ疑問に思うことがあるの」
「何にゃ?」
「あんたはなんでカーギーに入らないの?」
「興味がないにゃ」
「何でよ? 私みたいに市街に住めば明日の食事を気にしなくて済むのに、幸せになれるのよ」
「また、それかにゃ……断言できるのかにゃ」
「どういう意味よ」
「だいぶ前のことだがにゃ、あたしは市街に潜り込んだことがあるにゃ。確かにどいつもこいつも楽しそうに歩いていたにゃ。同じような顔で笑って、同じ方向に歩いて、同じ服を着て、胡散臭いぐらいににゃ……」
「なんて一面的な……人は平等であってこそ……」
「それにゃ! その平等って奴、それが気に入らないにゃ! あたし達はみんな違ってるの当たり前だにゃ!」
「そんなことはないわよ、だったら不幸な人はずっと不幸で居続けなければならないわ」
「不幸じゃなくなればいいにゃ」
「人は誰でも平等に幸せになれる権利が……」
「にゃはははははははははははははっ!」
「なんで笑うのよ!」
「ちゃんちゃら可笑しいにゃ、あたし達を捕まえとしてる奴らがそんなこと言うにゃんてな。他人があたしのことを幸せとか不幸とか言うんじゃないにゃ、それが見下してるって言うにゃ」
「でも……」
「それに、あたし達はアルター使い、普通のキャラとは違うにゃ」
「…………」
「確かに、あたしは駄目猫にゃ、それにクズとウスノロを足しても良いにゃ……けどにゃ、あたしにはコイツ(アルター)があるにゃ! コイツは裏切らない! コイツはあたしがあたしである証にゃ!」
「あんたは自分の力を誇示するためだけにカーギーに敵対したっていうの?」
「お前らがあたし達の場所に踏む込んできたからだにゃ、それに受けた借りを返したかったんだにゃ」
「楓ちゃん?」
「ああにゃ」
「信じられないわ。それだけの理由で……」
理由になってないかにゃ? ただ喧嘩に負けただけじゃないにゃ、あの女の子には何か感じるにゃ……」
「楓ちゃんは市街で生まれ育ったのに?」
「マジにゃ!?」
「ええ、それもかなり高貴な生まれで……あんたみたいな野良猫とは似ても似つかないわよ」
「にゃははっ! それは良い、傑作にゃ! ますます興味が湧いてきたにゃ、楓ちゃんって奴に」

バッシュウウ! ニャゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

「なんにゃ!? お前の仲間か?」
「それなら連絡があるはずよ」



猫ライド(アイキャッチ)



「猫瑞希ちゃん……なにやってるんですの?」



地下で得体の知れないバケモノと対峙してました。
「ちょっとでかいにゃ……」
「いった誰が……」
「今はそんなことを考える場合じゃないにゃ」
「そうね……」
後ろに数歩下がる由綺と、前に踏み出す猫瑞希。
「何やってるのよ!?」
「何やってるにゃ!?」
見事に声がハモる。
「そっちはさっき来た道にゃ、出口を捜すんじゃないのかにゃ」
「こんな所で戦ったら、崩落が……」
「だからって、逃げてどうするにゃ!」
「対策を練るのよ」
「嫌だにゃ!」
「どうして!?」
「諦める方向に行きたくないにゃ!」

ドゴオオ!

バケモノの攻撃をかわす、猫瑞希。

「あたしはにゃあ、しょうがねえ、運が悪かった、自分にはできない、明日やればいい……そんなことを言ってる奴を五万と見てきたにゃ。けどにゃ、あたしにはどうしてもそいつらが何かするとは思えないにゃ。だから、確かめるのにゃ! あたしは違うにゃ! 絶対違ってるやるってにゃ!」

ブオオオオオッ!

「にゃおおおおおおっ!(衝撃のファースト猫パンチ))

ズゴオオン!

猫瑞希の一撃がバケモノの触手を破壊する。しかし、一瞬で触手は再生し猫瑞希を吹き飛ばす。
「にゃあああああっ!」
吹き飛ばされた猫瑞希は泥沼にハマってしまった。
「このにゃろう……にゃああっ!」
泥沼から脱出しようと、拳を泥沼を殴りつけ、腕まで沼にハマってしまう。
「何やってるのよ! 考えないのにもほどがあるわよ!」
「うるさいにゃ、喧嘩でくっちゃべるにゃ……にゃっ!」
「私は元の道に戻るわよ。崩落の危険性もあるし……それに、元々、私とあんたは敵同士」
由綺は踵を返すと、元来た道をゆっくりと歩いていった。
「そうだにゃ、お前が無事だったら続きをやろうにゃ、アレのな……にゃああああっ!」
バケモノの触手が猫瑞希の体中に巻き付き、猫瑞希をバラバラに引き裂こうとする。
「………………」
由綺は足を止めると、振り返る、その瞬間、

バシュッ! バシュッ! バシュッ!

無数のCD(ホワイトアルバムエイト)がバケモノを貫いた。
「馬鹿よ、あんたは……いえ、こんなことをしている私も」
CDがバケモノを攻撃しつつ、猫瑞希を泥沼から助け出す。
「フッ……にゃああああっ!」
自由を取りも出した猫瑞希は野性的な笑みを浮かべながら、バケモノに突撃していく。

ドカッ! ドカカッ! ドカッ!(バケモンを殴り続ける、猫瑞希)

「なぜかしら、突き動かされてしまう。嘆きも悲しみもなく、ただ前を向いてるだけのこの野良猫に、なぜか私は……感銘すらしている!」

バシュ! バシュッ! バシュッ!(ホワイトアルバムエイトの攻撃)

「撃滅のセカンド猫パンチ!」
「きゃあっ」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

ひっくり返る、バケモノ。

「私が抑えてる間に、本体を……」
「もう見つけたにゃ」
「え?」
バケモノの横に同じ格好で倒れている、子猫(ピロ)がいる。
「こいつが本体だにゃ」
「まさか、野生動物がアルターを……」
「お前、元ネイティブリーフのくせに、アルターの森のことを知らないのかにゃ?」
「アルターの森?」
「知らないなら、見たままを信じろにゃ。こいつがアルター使いにゃ」
「……私がこの動物を制御して……」
「やめろにゃ」
「倒そうとしていたのはあんたでしょ?」
「事情が代わったにゃ。こいつの所に勝手入ってきたのは、あたし達にゃ。こいつが抵抗するのは当たり前のことにゃ。あたしがこいつでもそうするにゃ」
「あんたがカーギーに逆らったように……?」
「お前はどうなんだにゃ?」
「私はカーギーとして………………違う! 護るべきもの、維持したことがあるから戦っているのよ!」
「だったらこいつと同じにゃ」
「フフフッ、そうね……」
猫瑞希は猫の頭をそっと撫でる。
「ごめんにゃ、あたしが悪かったにゃ……」

ピシピシ……ガララン!(突然、崩れた天井が落ちてくる)

「にゃおおおおおおおおおっ!」
猫瑞希は拳で、落ちてきた天上を受け止め、そして破壊した。
「これで貸し借り無しにゃ」
「無茶ばかりして……」
「まあ、やみくもに突っ走っても駄目なこともあれば、さえない時もあるけどにゃ……」

ポン!(猫瑞希は由綺の肩に手を置く)

「……けど、たまには良いこともあるにゃ ♪」
「そうね、あははははははははははっ!」
「にゃはははははははははははははっ!」
二人は楽しげに笑いあった。



「夢の……夢の中にいるその人は、暗闇の世界から日の当たる場所へと戻ってきましたの。あたしはホッとしてとても晴れ晴れとして気持ちになりましたの。その人も同じはずなのに、なのにどうして……どうしてこんなことになってしまうんですの? あたしにはわからないですの。まったく理解できないんですの」



戦闘態勢で対峙しあう猫瑞希と由綺。
「あたしのは残り一撃にゃ」
「奇遇ね、私のホワイトアルバムエイトもそんなところよ」
「オッケイにゃ、あとくされなくていいにゃ」
「そうね」」
「お前はひとを見下す、苛つく奴にゃ」
「あんたは下品で鼻持ちならない野良猫ね」
「先に飯を食いやがったにゃ……」
「まだ根に持ってたの?」
「ああ、むかつくにゃ。むかつくが……嫌いじゃないにゃ ♪」
「私もあんたの生き方を否定する気ないわよ、むしろ羨ましいわよ」
「にゃはは」
「フフフッ……だけど、譲れない物があるわ!」
「ああ、渡せないものがあるにゃ!」
「そのためには戦うしかない時も……」
「あるにゃっ!」
「あるわっ!」
「抹殺のラスト猫パンチ!」
「ホワイトアルバムエイト!」

バシュウウッ!

「にゃああああっ!」
「はああっ!」

ガシュウウウッ!

少しずつ猫瑞希の拳がホワイトアルバムエイトを押し返していく。
「……いけない、このままだと……一端受け流して背後から……」
「にゃああああっ!」

ドゴオオオオオン!

「またね……また私は迷ってしまった。一瞬諦めてしまった。譲れないものがあるのに、こんなにも簡単に諦めてしまうなんて……あの時も、あの時も、偶然迷い込んできた幸せをなんとか維持しようともがく毎日…………ねえ、冬弥君、教えて、私はホントにあなたのことが好きだったの? それともあそこに居たかっただけなの?…………フフフッ、ホントは誰かに何かを言って欲しかっただけなのかもしれないわね……」


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


「おい、生きてるかにゃ?」
「……ええ、私の負けね」
「みたいだにゃ」
「……なんて、言ったっけ、あんたの名前?」
「聞いてどうするにゃ?」
「知りたいのよ……」
「猫瑞希にゃ」
「猫瑞希……」


「もう私は戻れないわ、だから……」
「勝手にしろにゃ。ここで野垂れ死のうが、無理矢理カーギーに戻ろうが、お前の自由にゃ。おもしろかったにゃ、お前、それなりににゃ……じゃあにゃ」
ふらつきながら、去っていく、猫瑞希。
由綺はその背中を見つめていた。
「私にできるかしら……掴むことが……違う! 勝ち取るのよ! そのためになんとしても市街に戻るのよ、そして見極めるの、自分が何を必要としているのか、何を求めているのかを……」



全ての一部始終を見ている者がいた。絶対電波の瑠璃子。そして、彼女を通して全てを見極めていた、セリオ・クルスガワである。
「すみません、由綺さん。しかし、事態は動いています。償いに、四半世紀の罪は私が必ず清算しましょう」



「確かこの辺のはずにゃ……にゃあああっ!?」
体を引きずりながら、ティリア達と分かれていた場所にたどり着いた猫瑞希が見つけたのは、ボロボロに傷つき倒れているティリアだった。
「ティリア! おい、ティリア、しっかりするにゃ!」
「……なんだ、無事だったのかにょ。こっちはさ、みんなさらわれてしまったにょ……香里さんも……頼むにょ、こいつ(お金)で香里さん達を、みんなを助けて……」
ティリアは意識を失った。
「ティリアアアッ!」


「その時、夢の中のあたしは大声で叫んでいましたの。とても言葉にならないぐらい。ああ、それは……」




次回予告(香里&美汐でお送りします)
「というわけで最短更新の猫ライド第7話です」
「すごい……24時間経ってないわよ、まだ……」
「その代わり、誤字脱字など読みにくい点がありましたら大目に見てくださいね。指摘はどんどんしてくれて良いですから」
「……なんで、厳重にチェックしないのよ?」
「もう眠いんです。チェック後だと、アップが半日は送れてしまいます」
「………………」
「では、香里さん、久しぶりに次回予告をやっちゃってください」
「……いいの?」
「ええ、次の話だけは絶対にやる予定ですから。むしろ、飛ばされる(欠番)可能性があったのは今回の話の方です」
「……なぜ?」
「由綺さんの活躍する話なんか書けるか!……て理由です」
「惨い……」
「実際、由綺さんはオフィシャルの性格だと使い物にならない、ごった煮の性格にすると別人と文句言われるという役立たずですからね」
「……否定できないわね……」
「いっそのこと、橘くんの性格と喋りに変更してしまうというアイディアもあったんですよ」
「……あの子に人権ってないの?」
「あるわけないじゃないですか、そんなもの。売れないアイドルは一般人以下ですよ、ただのクズです」
「そこまで言う……」
「まあ、落ちぶれたアイドルのことはほっといて、次回予告お願いします、香里さん」
「解った、いくわよ……『物語を脚本する同人作家しおりん。彼女が、漫画用原稿用紙に絵を刻むとき新たな物語が動き出す。最悪のネームが、猫瑞希の運命を今大きく改定する。この罠をまさに脚本通り』……こんなところかしら」
「お疲れさまです。では、またいずれお会いしましょう」
「今度も早いといいわね。では、またね」
「美味しいです(ミスターな味っ子)」



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