リナリナ猫瑞希ぱきゅう編【夢現の猫ライド】
第17話「美坂香里」


「フッ……カーギーに捕まって本土(鍵)に連れて行かれた、あたしがなぜここにいるのかって思ってるんでしょう?」
「…………」
「もちろん、あなたに会うためよ」
右手の服の袖をそっとめくる香里。
そこにはバイオリズムのようなものが表示された奇妙なブレスレットがされていた。
「あたし、あなたのこと好きだったわ……でも今は違う……欲しいのはあなたじゃなくて……あなたの命……」
「にゃっ!」
「香奈子ちゃあああああああああああん!(巨大香奈子の消火器アタック)」

ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

「お前……にゃ!」



ちゃんらちゃんらら〜 ♪ ちゃんちゃら ♪ ちゃららら〜 ♪

「奪えにゃ! 全てにゃ! その手でにゃ! 目覚めた本能(猫耳)体を駆けめぐ    るにゃ〜 ♪」
「夢や愛なんて都合のいい妄想♪ 全年齢版(コンシュマー)踏みしめ 果てしない18禁版へと手を伸ばす〜 ♪」
「ぱきゅぱきゅふぁいあ ♪ そう大胆に魂に火をつけますの ♪ 逃げ場なんてありませんの ♪ 落とせない原稿を描き上げるまでは〜 ♪」

               猫ライドOPテーマ 歌 猫瑞希、緒方理奈、御影すばる


香奈子の攻撃で粉々になるビルから転げ落ちる猫瑞希。
「この女にゃ…………なぜ……なぜにゃ……」
周りの物質(岩や石)が分解されて、雪に再構築されていく。
「猫瑞希……あなたは母なる雪に包まれて朽ちていくのよ……優しく抱いてあげる、包んであげる、このあたしが!」
香里の背後に高貴な気品に満ちあふれた雪だるまが構築された。
「そ、それは……」
「驚いた?……これがあたしのアルター…ノーブルスノーマン! あたしの作り出した雪はあたしの意のままに姿形を変えるの……そして、雪を形成する物質も全てあたしのもの」

ザパパパパパパパアッ!

香里の作り出した雪の雪崩に呑み込まれ、もがく猫瑞希。
「にゃああああぁぁ……」
「なんてみっともなくて見苦しい……そうまでして生きたいの? 再隆起現象(DC版こみパのできの酷さ(音質最低、最悪のコマンド入力、バグだらけ&そのこと黙殺))を巻き起こし、ロストリーフを再び混乱に陥れた女が……生き恥をさらすぐらいならっ!」
新たに作り出された無数の氷柱が猫瑞希に襲いかかる。
「にゃあああっ!」

ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!

アルター(右腕)の背中の飾りを大回転させて、空に脱出する猫瑞希。

「……駄目よ、駄目! 例えあなたの新しいアルターでもそんな方法で助かるなんて……あたしが許さない!」
「にゃあっ!」
雪の中に潜って逃げる、猫瑞希。
「……そう……そんなに逃げたいの……」
香里はちらりと背後の瑞穂に視線を向けた後、
「逃げられない……いいえ逃がさないわ、猫瑞希」
猫瑞希の後を追って雪の中に潜っていった。



「…そうですか…美坂香里が猫瑞希を見つけましたか。では、私も現場に向かいます」
電話を切った美凪は、車の外に視線を向ける。
「…邪魔です」
ギッ!と一瞬だけ空を睨む、美凪。
「くすくす……くすっ!?」

パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

遙か遠くから、美凪を見張っていた絶対電波の瑠璃子が吹き飛ばされた。



「はあはあ……これがしがらみって奴かにゃ……たまったものじゃないにゃ……」
雪の中を泳いで、洞窟にたどり着いた、猫瑞希は呼吸を整えていた。
「……ここなら監視の目も届かない……」
猫瑞希の居場所をあっさりとみつける香里。
しかし、彼女はアルターを解くと、
「会いたかった、猫瑞希」
猫瑞希に抱きついた。


「楓お姉ちゃん、ずっとここにいるつもりなの?」
「……私はあの人達を守ると誓いました……私は私の信念に基づいて行動します……」
「でも、お姉ちゃんがここにいたら、千鶴お姉ちゃん達がまた来るよ……あの人達を巻き込むことに……」
「……私がここから離れても……あの人達が安全に暮らせるとは限りません……」
「だからって……」」
「……解っています、私の一方的なわがままだと……でも、見てしまいました、知り合ってしまいました……もう後戻りはできません……」
「ホントに不器用だね、楓お姉ちゃん……」
「ええ……初音の気持ちすら蔑ろにしている……そんな姉です……」
「楓お姉ちゃん……」

ガサッ!

気まずげに岩陰から姿を現す、すばる。
「ぱぎゅう……エルクゥの制服じゃみんな怖がりますの……あと食べ物ですの☆」
「……ありがとうございます……」



「カーギーが捕まえたアルター使いはカーギーに帰属するものを除いて、みんな本土(鍵)に送られるの、アルター能力解明のための研究材料として……」
猫瑞希の隣に座り込んで独白する香里。
「あたしも本土(鍵)に行ってアルター能力の秘密を知ったわ。アルター使いの生まれた理由、それは大隆起現象で別の世界との扉を開いてしまったから……アルター使いはその世界とアクセスすることで、物質を変換して自分のエゴ(萌え)を具現化してるらしいわ……生まれる前から向こうの世界を認識しているあたし達はそのアクセスの方法を無意識に理解しているのよ……だから、ロストリーフの新生児からしか、アルター使いは生まれない……」
「にゃ……理由にゃんて知ったって……どうにもならないにゃ……」
「そうね……でも、本土(鍵)の人達は、向こうの世界にある無尽蔵かもしれない力(萌え)を手に入れたがってるわ……美少女ゲームの大革命だって……そのために多くの人が研究されたわ……あたしも……あたしも向こうの世界こそ見られなかったけど……本土で精製され、力が何倍にも高められたわ……」
「…………」
「猫瑞希……あなたは見たはずよ、向こうの世界の光を……」
「……覚えてないにゃ」
「でも、体は覚えているはずよ……あなたがさっき見せたアルター……そして、再隆起現象が何よりの証拠……」
「……そんなことをあたしに話してどうするにゃ……」
「一緒に本土(鍵)に来て……」
「にゃ……」
「堂々と胸をはって本土(鍵)に行くの……あなたなら向こう世界の扉を開くことができる……その力でこの歪んだ世界を変えることができる! 壁をを叩き壊すことができるのよ、猫瑞希!」



CM「猫ライド! ビデオレンタル10月25日スタートですの☆」



「すばらしいことだと思わない? あたなの力で変えられるのよ、あなたは世界に選ばれた1人なのよ……」
「ごめんだにゃ、利用するのも…… 利用されるのも……」
「その力を手に入れればみんなを救えかもしれないのよ! 友達を! ティリア君達を!」
「死んだにゃ……」
「え……?」
「奴は死んだにゃ……」
「ティリア君……」
「それに猫パンチも後何発撃てるかわからないにゃ……」
「……これは……」
「お前の言う向こう側を見た奴はこうなってしまうのかもしれないにゃ……そんなもの求めてどうするにゃ?」
「どうしても駄目……?」
「ああ、気が知れないにゃ……」
気まずい沈黙の後、先に口を開いたのは香里だった。
「妹……栞が……本土(鍵)で治療を受けてるの……治療を続ければ病気が完治するって……だから、あたしどんな目にあわされても我慢してきたわ……栞のために……」
「……あなたがいつかあたしに言ったこと覚えてる……?」

回想シーン開始

「あたしの目の前に分厚い壁があって、それを突破しなければいけにゃいなら……あたしは迷わずこの力を使うにゃ……迷わずににゃ! いいにゃ、迷うにゃよ! 本気で妹を助けたいと思うなら迷うにゃ!」
「今、あたし達の前に分壁がある……
「そいつを叩きつぶすにゃ!」
「ええ……」

回想シーン終了

「そうか……今のあんたには言うことをきかないあたしが壁というわけかにゃ……」
「そうよ……そしてあなたにとってもあたしが目の前の壁、壁なのよ!」
香里の背後にノーブルスノーマンが再構築される。
「……あたしは戦う! あなたを倒す! 栞のために……!」
再び雪崩が猫瑞希を呑み込む。
「あなたは私の壁、だから、想い出と共に全てを粉砕する! 栞のために!」
無数の石入りの雪玉が猫瑞希を襲う。
「あなたを完全に消滅させる! 栞のために……栞の……」
猫瑞希の姿は雪の中に完全に呑み込まれ見えなくなった。
「ごめんなさい、猫瑞希、いまさらあやまってもしかたないことだけど、あなたを本土(鍵)に連れていけない以上……あたしは……」
香里の瞳から涙が一粒こぼれ落ち、雪に溶け込んでいった。

底のない雪の中に沈んでいく猫瑞希。
「にゃ……あたしの命か……これほどちっぽけなものもないにゃ……それで誰かが幸せになれるにゃら……それもいいかもしれないにゃ……いいにゃ……くれてやるにゃ……好きにするにゃ……おあつらいむきの死に場所にゃ……」
『苦しいにゃ!』
もう1人の猫瑞希(心の声)が聞こえてくる。
「何もがいてるにゃ……」
『苦しいにゃ!』
「いいかげあきらめろにゃ!」
『あきらめてたまるかにゃあっ!』
「もういいにゃ……」
『死んでたまるかにゃああああああっ!』
「もういいって…………」

『おい、なにしてるにょ!ぼけっとしてらしくないにょ!』
心の声とは別の声が聞こえてきた。それは死んだティリアだった。
「……偉そうに言うにゃ、ティリア……」
『だらだら生きたくないんだにょ? だったらあがけにょ! 徹底的ににょ!」
「もういいにゃ……もういいんだにゃ……」
『こんなところで愚痴って何にになるにょ! 決め付けるなやるんだにょ!…………そういうお前のダチだったんだにょ、あたしは』
とびっきりの笑顔を見せるティリア。
「……卑怯にゃ……あたしばっか苦しい思いさせて、たまらない……たまらないにゃ、ティリア……」


「……海中に沈んで20分、いくら猫瑞希でも……」

……ザッ! ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

真っ二つに切り裂かれる雪の大地
「そんな、あたしが再構築したアルターが……はっ! まさか、猫瑞希」
「ああ、わかったにゃ、ティリア……あたしはまだお前を背負ってるにょ」
「猫瑞希!」
再び香里が猫瑞希に攻撃をしようとした瞬間、彼女の右手のブレスレットのグラフが急激な変化を見せる。
「そんな、栞! しっかりして、お願い、栞……あああっ!」
グラフは完全に停止する。それは栞の命が尽きたことを示していた。

香里の様子を遠くから見ていた美凪は小さく舌打ちした。
「…思ったより早かったです…まあいいいです、いまさらです……」


「駄目よ、栞……あたし戦う理由なくなっちゃったじゃない……」
「そうにゃ、消える(ユーザーから忘れられる)のが怖いんじゃない、何にもせずに消えていくのが怖いんだにゃ、何の証も立てずに朽ちるのだけは……絶対にごめんにゃああああっ! 猫パンチ!!!」
「ああ……それがあなたの……」
猫瑞希に愛おしげな笑顔を向ける、香里。
「あなたの……」
涙を流しながらの……それでも今まで最高の笑顔。
「もういいよね、栞……おねえちゃん、無理しなくても……」
崩壊するノーブルスノーマン。
香里はゆっくりと雪の上に倒れ込んだ。
「にゃ! お前……」
「栞、死んじゃった……死んじゃったわ……あたしも精製されすぎてもう……」
「すぐに医者の所に連れて行くにゃ! それまで頑張れにゃ……香里!」
「……やっと名前で呼んでくれたわね……」
力無く微笑む、香里。
「しっかりしろにゃ、香里っ!」
「猫瑞希……」
香里は猫瑞希の頬に手を添えると愛おしげに撫でる。
「……ごめんなさい、辛い想いをさせて……あたし1人が大変みたいなこと言って……あたしの気持ちだけ押しつけて……ごめんなさい……」
瞳を閉じる、香里。その瞳が再び開かれることは二度となかった。
「にゃぁ…………にゃああああああああああああああああああっ!」
猫瑞希の絶叫に答えるように、空から真っ白な雪が降り注ぐ。
「…………感じる……感じるにゃ! どこからこっち見て……ほくそ笑んでいるのは誰にゃあああっ!」
猫瑞希は猫パンチを地面に叩きつけ飛び上がる
「そこにゃあああ!」

プッ!とシャボン玉用のストローを吐き捨てると、猫瑞希を迎え撃つために美凪も宙に浮かび上がる。
「にゃああああああああああああああっ!」
猫瑞希の猫パンチをお米券で受け止める、美凪。
「お前いったい何者にゃああっ!」
「…本土(鍵)側のアルター使い、遠野美凪です」
「お前が香里を!?」
「…はい、私が精米(精製)しました」
「ふざけるにゃああああああああっ!」
「…真剣ですよ」
「にゃろうおおおおっ!」

バシイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィッ!

美凪の右目のサングラスが砕け散る。
「…そうその怒りです…その悲しみです…その強き信念です…さあ、開きましょう、向こう側の世界の扉を…出ないと彼女は無駄死にです」
「にゃああああああっ! 猫ォォォォパァァァァチィィィッ!」
「…!?」
「にゃあああああああっ!」
「…んっ!」
力を増した猫瑞希の拳が僅かだが美凪を押し飛ばす。
追撃しようとした猫瑞希だが、二人の力の激突によって生まれた光の柱に呑み込まれてまった。
「…例え、一瞬でもこの私を凌駕するとは…戻って来たかいがありました…次ぎの機会では必ずやあの中に……」


「にゃ……またにゃ!?」
「了承ぉぉぉぉっ」
「にゃ!?」
猫瑞希の背後に、右手に包丁、左手にジャム瓶をもった三つ編み女性型のアルターが立っていた。
「あいつは……」
謎のアルターは踵を返すとゆっくりと歩き去っていく。


「あははー……」
同時刻、理奈は珍しくシリアスに光の柱を見つめていた。


「楓お姉ちゃん、あの光り……」
「……ええ、あの光りは猫瑞希さんの……あの時の光りと同じです……」
「猫瑞希ちゃん点あの光の中に猫瑞希さんが……居ますの、猫瑞希さんが居ますの!」



次回予告(香里&美汐でお送りします)
「時の流れは早いもので、猫ライドももう17話目ですね、香里さん」
「そうね…………て! 17話って何よ!? この前の話は第4話だったはずよ!」
「細かいことを気にしないでください」
「……全然細かいことじゃないわよ……」
「たった12話ほど飛ばしただけじゃないですか。ひとによっては気づいてませんよ、きっと。たいして違和感ありませんでしたし……」
「……たった12話ってあなた……深夜アニメ(1クール)ひとつ分省略してるんじゃないわよ……」
「1クールは12話ではなく13話ですよ、香里さん」
「……問題はそこじゃないわよ……」
「まあそんなわけで、香里さん最後にして最大の見せ場の回、楽しんでいただけたでしょうか?」
「……最後……?」
「はい、香里さんはもう二度と本編に出ません」
「………………」
「あ、飛ばされた話が公開された場合は、一瞬(1、2セリフ)ぐらい出番がある可能性も0ではありません」
「……あなただって、この前の回(第4話)で出番終わりじゃない……」
「…………」
「…………」
「…二人は仲良し?」
「なっ!?」
「……いきなりわいてでない出ないください、美凪さん……」
「…とても良い雰囲気(険悪な雰囲気)でしたから……」
「…………で、何の用? まさかまた次回予告ジャックするつもり?」
「…お二人がやる気がないなら、代わりにお送りしようかと……」
「私はやる気あるのですが、香里さんが……」
「なっ!? あたしのせいにする気……?」
「事実を述べただけです」
「…やっぱり仲良し?」
「……まあいいわ。乗っ取られるのはごめんだから、さっさと済ませましょう……」
「そうですね」
「……とりあえず第18話『緒方理奈』の予告をしておくわね。次ぎがどうなるか知らないけど…………(声を若本○夫に変える)『遠い日の約束、とまどいの再会、すれ違う心、すれ違う体、ああ、しかし、例えこの想いが届かぬとも、愛は最速で駆け抜ける、だから、誓う、この恋に殉じる』……(声を戻す)……殉じる?」
「…サブタイトルで名前を使われるとお亡くなりになるという法則があるそうです」
「確かにかなりの高確率で成り立ってますね、その法則……今のところはですが」
「秋子さんの次ぎに殺しても死ななそうなあの人を……殺れるの?」
「香里さん、嬉しそうですね……」
「そ、そんなことないわ……」
「…あの二人には玩具にされてるみたいですから……」
「(あなたにもよ……)」
「つまり、香里さんの抹殺(したい)リストのベスト3は秋子さんと佐祐理さんと美凪さんということですね」
「(ベスト4はあなたよ……)」
「…では、今宵はここまでといことで」
「それじゃあ、よければ次回も……」
「見てくださいね、レッツ&ゴー!」」



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