ライトニング・カノン
第4話「恋愛ドラマ好きになったのは妹の影響です」



「ふう、サッパリしたな」
湯船に使って体も温まった。
後は眠るまでゆっくりするだけである。
「さて、テレビでも見るかな」
適当にチャンネルを合わせて、しばらく時間を潰していると、

ガタ!

香里も風呂から上がってきた。
「よう、ちゃんと温まったか?」
「ええ」
まだ塗れたままの髪で、爽やかなに答える、香里。
風呂上がりの少しだけ火照った顔が、普段以上の色気を感じさ、とても妖艶に思えた。
「フフフッ……」
ぺたん
「あ、おい……」
いきなり、祐一の隣に座すると、香里は当然のようにテレビのチャンネルを変える。
すると、タイミングよく恋愛ドラマらしきタイトルが表示された。
「良かった、丁度今からみたいね」
「良かったじゃねえ! 何いきなりチャンネル変えてるんだ!」
「しっ! 黙ってなさいよ!」
「なんだ……」
「静かにしてなさいよ! この番組楽しみにしてたんだから!」
「………………」
そういうと画面を食い入るように見つめる、香里。
(なんて勝手な奴なんだ……)
さっきは不覚にも妖艶な色気で誘惑されそうになったが……。
「フフフッ……ウフフフッ……」
「…………」
祐一は文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、香里が怖いぐらいに楽しみにしてるみたいなので、黙って見させてやることにした。
「あら? 相沢君、どこに行くのよ?」
席を立とうと腰を上げようととした祐一を制止する、香里。
「いや、部屋に戻ろうかと……」
「駄目よ、折角だから一緒に見なさい」
「なんで俺が、香里と恋愛ドラマを見なきゃ…」
「あ! いきなりそんな展開に!?」
「お、おい……」
「しっ! 黙って見ていなさい!」
香里の迫力の前に、部屋に戻るタイミングを完全に逃してしまった祐一だった。
「フフッ、酷い主人公ね、ヒロインが可哀想だわ……」
「ヒロインもあんな男見限ればいいのに……」
「…………なあ、香里?」
「静かに! 今いいところなのよ!」
「………………」
祐一は番組が終わるまで大人しくすることにした。



「フフフッ、面白かったわね、相沢君」
「……そうだな」
「一体、明日はどうなるのかしらね?」
「明日見れば解るだろう」
「そうね、今から楽しみだわ」
そう答えると香里は、とても楽しげだ。
対して、祐一はとても疲れていた。
「……まあいい、じゃあ、俺は寝るから」
「ええ、お休みなさい、相沢君」
「ああ……お休み……」
「相沢君!」
「ん?」
「明日も一緒に見ましょうね」
「…………」



「うう、疲れた……」
今日も一日香里に振り回された気がする。
秋子さん達が帰ってくるまで、ずっと香里のペースにつき合わされるのだろうか?
「まあいいや、寝よう」
祐一はいつものように寝る前に部屋を暖めようとリモコンを押す。

ピッ! ピ! ピ! ピ!

「あれ?」

もう一度試してみる。だが、何度試しても暖房はつかなかった。

「嘘だろう?」
この寒さの中、暖房なしで寝るのは辛すぎる。
だが、つかないものは仕方ない。
「せめて、毛布でももう一枚あれば少しはマシに……」
だが、余っている毛布など……。
(待てよ、あいつの使っているのがあったな……)



コンコン!

「おい、香里」

コンコン!

「まだ起きてるか?」

ガチャ!

「もう、こんな時間に何の用よ、相沢君?」

ドアが開くと、眠そうな顔の香里が顔を出す。

「悪い、もう寝てたか?」
「いいえ、そんなことはないけど……あたしに何の用?」
「ああ、実はな……」
「実は何よ?」
「実は俺の部屋に非常事態が発生した」
「……はぁ? 非常事態?」
「非常事態だ、非常事態。そのせいで俺は困ってるんだよ」
「……そう……それは大変ね……」
「そこで、香里の力を借りたいんだ」
「……いまいちよく解らないんだけど……結局、相沢君の部屋で何があったのよ?」
「……暖房が壊れた」
「はい?」
「だから、エアコンが壊れたんだよ!」
「そう、そうなの」
ようやく香里は状況を理解してくれたようだ。祐一は用件を伝えることにした。
「おかげで寒くて、眠れそうにないんだ!」
「そう、それはお気の毒だったわね」
「だから、お前の助けを借りたい」
「でも、あたしは機械は破壊するのは得意だけど、直すのは苦手よ」
「誰がお前に直してくれと言った?」
「あら、違うの?」
「お前に修理を頼むぐらいなら、自分で直す」
「じゃあ、何をして欲しいのよ?」
「部屋を変わってくれ!」
「嫌よ!」
秋子さんの了承を上回る速度で即答する、香里。
「んじゃあ、一緒に寝ようか」
「えっ…………」
「………………」
「……そうね、いいわよ」
「か、香里、何言ってるんだ! そ、そんなの駄目に決まってるだろう!」
「何慌ててるのよ、冗談に決まってるでしょ」
「ふうふう……冗談なのか?」
からかうつもりが、逆にからかわてしまった祐一だった。
廊下の寒さが祐一に本来の目的を思い出させる。
「じゃあ、毛布貸してくれ」
「あたしの?」
「他に誰のがあるんだ?」
「嫌よ! どうしてあたしが!!」
「俺の部屋の暖房が壊れたから」
「それはあたしに言っても仕方ないでしょ!」
「おいおい、香里には優しさってものがないのかい?」
「何言ってるのよ! あたしだって毛布がなかったら寒いのよ!」
「お前の部屋の暖房は壊れてないだろう!」
「そ、それでも寒いものは寒いのよ!」
香里は意地でも毛布を貸してくれそうにない。
「もし俺が風邪でもひいたらどう責任とってくれるんだ?」
「責任?……………安心していいわよ。その時はあたしが優しく看病してあげるから♪」
「看病はいいから、毛布をプリーズ!」
「酷いわ……」
これ以上話しても無駄な気がする。
祐一は最後の手段を取ることにした。
「こうなったら最後の手段だ!」
「な! ちょっと!?」
戸惑う香里の隙をついて、祐一は部屋に潜り込む。
「はははっ! 毛布はもらっていくぞ!」
「いきなりあたしの部屋に入って、何馬鹿なこと言ってるのよ!」
「名雪の部屋だろう」
「ちょっと、ホントに持っていく気!?」
「じゃあ、そういうことで、またな、香里」
祐一は入ってきた時と同じように、香里の隙をついて部屋を出る。脇にはしっかりと毛布を抱えていた。
「速い!?」
「まだまだ修行が足りないな、香里!」
「こら、相沢君、毛布を返しなさいよ!」
「それではまた会おう!」



「うむ、やはり二枚あると温かさが違うな」
香里の犠牲のおかげでぐっすりと眠れそうだ。
少し可哀想な気もするが、暖房をつければ大丈夫だろう。
「おやすみ……香里……」







次回予告(香里&未汐)
「以上、第4話でした」
「最近、こればかり更新されるわね」
「間が開いてしまうと、そのまま打ち切りになる可能性が高いですから。集中力というか気力(書く気)があるうちに書いてしまうべきです」
「そうね……」
「実はこの4話ですが、原作と違って、相沢さんと香里さんを一緒に寝かせてしまうかというアイディアもあったりしました」
「えっ…………それはちょっと流石に……でも……嫌ってわけじゃ……でも……」
「何を恥じらってるんですか? 気持ち悪い……」
「なんですって!」
「でもここで結ばれてしまうと、今後の話がやりにくなるかもしれませんし、18禁指定がついてしまう危険せいがありましたの、辞めておきました」
「……なんか複雑な気分ね……」
「その方(没案)のが良かったんですか?」
「……………………」
「…………ぼそ(……色ボケ……)」
「なっ! 今なんて言ったの!?」
「なんでもありません。では、今回はこの辺で……」
「そうね。じゃあ、良ければまた見てね」
「小さな恋と冒険の物語」



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