カノン・サバイヴ
第17話「天使達の昇天」



「うっぐっぐっぐっぐっ! さあ、ついにボクの登場だよ! KANON正当にして最強のヒロイン! 月宮あゆの降臨だよ!」
スクール水着の上にダッフルコートを羽織った茶髪(カチューシャ付き)の少女、月宮あゆは大地を見下ろす。
大地には、自らの放ったダブルタイヤキバスターカノンの一撃でクレーターができていた。
「うっぐっぐっぐっ! 全員跡形もなく吹き飛んだみたいだね。これじゃあ、名乗りを上げる必要もなかったね」
バサバサッとあゆの背中の光の翼が揺れる。
「さて、これで残り四人だね。次は……」
「シュートベント! 雪玉キャノン!」
「うぐぅ!?」

ズドオオオオン! ズドオオン!

どこからか飛来した二発の雪玉があゆに直撃した。
あゆは墜落していく。
「うぐ……うっぐぅっ!」
あゆはなんとか地面に激突にする直前に翼を羽ばたかせ、綺麗に着地した。
「不意打ちしておいて、何を偉そうに勝った気になってるんですか、あゆさん」
あゆの正面には雪玉キャノンを装備した栞が立っている。
「うぐぅ、栞ちゃん、常に死にそうなくせにしぶといね」
「あゆさんと違って、日頃の行いがよいですから……シュートベント、雪玉ランチャー!」
「うっぐっぐっぐっ! そんな玩具でボクに勝てるつもりなの?」
「勿論ですよ。私のために死んでください、あゆさん!!!」

ズドオオオオオン! ズドオオオオオオオオオン! ドカアアアアアアアアン!

雪玉キャノンと雪玉ランチャーが連続して火を吐いた。
無数の雪玉があゆを襲う。
「うぐぅ♪」
あゆは左上に飛んで雪玉をかわした。
「ちっ!」
栞は標準を修正して射撃を再開する。
「うっぐっぐっぐっ♪」
しかし、あゆは今度は上昇してかわした。
「えぅ〜〜っ!」
栞が標準を修正して射撃、あゆがそれを華麗に飛んでかわす、その繰り返し。
「うっぐっぐっぐっ♪ この翼は飾りじゃないんだよ、栞ちゃん」
「えぅ〜! あゆさんのくせに……」
「栞ちゃんとボクとでは格が違うんだよ! この運動性能! この反応速度!」
あゆは栞の雪玉をかわしながら、栞に向かって突っ込んできた。
「えぅ!?」
「そして、この火力の差! シュートベント! 閃光の翼(ライトニングフェザー)!」
「ガードベント! ストールアーマー!」
栞の直前で急停止したあゆは翼から無数の光の羽を撃ちだす。
栞はとっさにストールを鎧のように身にまとうが、閃光の翼の前には文字通りただの布切れに過ぎなかった。
「えぅっ!?」
無数の光の羽がストールごと栞に突き刺さる。
「さらに、シュートベント! タイヤキガン!」

ガオオオン! ガオオオン! 

タイヤキ型の銃身に変化したあゆの左腕が光の弾丸を連射した。
「げふぅ……雪玉キャノン!」
栞は吐血しながらも、なんとか雪玉キャノンで光弾を迎撃する。
栞は絶望的なある事実に気づいた。
あゆのタイヤキガンと自分の雪玉キャノンの威力がまったくの互角。
サブマシンガン程度のサイズのあゆの銃と、自分の背中に装着した二門のキャノン砲の一発の威力が互角……しかも、あゆの銃は自分のキャノン砲と違って……。
「うぐぅ!」

ガオオオン! ガオオオン! ガオオオン!

「えうううううううううううううぅ!?」
連射がいくらでも可能なのだ。
「火力の違いを感じながら逝くといいよ、栞ちゃん! シュートベント! ダブルタイヤキバスターカノン!!!」
あゆの両手に一ずつ、巨大なタイヤキ型のバスターライフルが出現する。

ガチャン!

二門のライフルが重なり一つになり、最強の破壊力の一撃を放った。
「えぅ!?」
栞は瞬時に悟る。
ストールはもちろん、例えヘビースノーマンを盾にしたとしてもこの一撃に耐えることは不可能。
助かる可能性がある方法は一つだけ。
「ファイナルベント! エンド・オブ・スノー!!!」
栞を庇うように前面に出たヘビースノーマンが全弾を発射した。
「うっぐっぐっぐっ! 無駄だよ、栞ちゃん!」
あゆのダブルタイヤキバスターカノンの光線は全ての雪玉を呑み込み、そのままヘビースノーマンに直撃する。
「えううううううううううううううううううううううううううううううっ!」
光線はヘビースノーマンを粉々に砕け散らし、背後の栞を吹き飛ばした。
「うっぐっぐっぐっ! 所詮、第1段階の栞ちゃんなんてボクの相手にはならないんだよ」
「…………えぅ……」
栞はふらつきながらも、なんとか立ち上がろうとする。
「えぅっ!」
栞の口から大量の血が吐き出された。
「うぐぅ? まだやるつもりなの、栞ちゃん?」
呆れたような、馬鹿にしたような口調のあゆ。
「あたりまえです……私は自分のためだけに戦ってるんです……だから強いんです……どんなヒロインが出てきても……絶対に……負けない……どんな手を使っても勝ち残る……最後まで生き残るんです!!!」
栞は最後の力を振り絞って立ち上がった。
「凄まじい生への執念だね……常に死が身近な栞ちゃんだからこそかな……いいよ、今、栞ちゃんを楽にしてあげるよ! ボクのファイナルベントでね」
あゆは一枚のカードをデッキに装填する。
「ファイナルベント! 天使達の昇天!!!」
あゆの正面に天使の人形が出現した。
天使の人形は三つの光と化す。
三つの光はそれぞれ幼いあゆに変化した。
三人のあゆが栞を三方から包囲する。
三人のあゆが同時にタイヤキバスターカノンを撃ちだした。
前方のあゆは右のあゆに向けて、右のあゆは左のあゆに向けて、左のあゆは前方のあゆに向けて、繋がった光線が栞を取り囲む形で三角形を描く。
「うぐぅ♪」
あゆがパチンと指を鳴らした瞬間、三角形の光線が、三人のちびあゆが大爆発した。
「ばいばい、栞ちゃん。天国で幸せに暮らしてね……」
爆発と共に膨大な光が天を貫くように立ち上る。
まるで天国まで繋がっているかのように……。



「…………栞?」
香里は歩みを止めた。
今、一瞬感じた感覚、あれは多分……。
「あははーっ♪ 誰かと思えば化けて出ましたか、香里さん♪」
香里の思案を阻むように、佐祐理が姿を現す。
「いきなり何かに吹き飛ばされた時はムカつきましたけど、獲物を見つけられたから良しとしましょう♪」
「獲物? 誰のことかしら?」
「あははーっ♪ 勿論、香里さんのことですよ♪ 二度も佐祐理を楽しませてくれるために死んでくれるなんて……感謝しますよ、香里さん♪」
「……フッ、あなた何も変わっていないみたいね」
「あははーっ♪ 佐祐理は今の佐祐理が大好きだから♪ 変わる必要なんてないですよ♪」
佐祐理は魔法のステッキをどこからともなく取り出した。
佐祐理はステッキにカードをセットする。
「さゆりん☆ファイア♪」
凄まじい炎が香里に向けて撃ちだされた。
しかし、炎は香里に届かない。
「さゆりん☆ブリザード♪」
佐祐理は今度は吹雪を放った。
しかし、吹雪も炎と同じように、見えない何かに阻まれて香里には届かない。
「ガードベント、不可視の壁。あなたの低レベルな魔法では傷一つ付けることできないわよ」
「ふぇ!?……少しは強くなったみたいですね♪ でも、佐祐理の魔法を馬鹿にしたことは許せません♪」
佐祐理はアドベントのカードをステッキに装填した。
「出よ、ポチ1号北川さん♪」
メタル北川が召喚される。
ちなみに、みちるダイバーがポチ2号。
「あははーっ♪ かっての自分のモンスターに殺られるといいです♪ ユナイトベント♪」
「………………フッ」
三体の契約モンスターが合体し、最強のモンスター、ジェノサイダー北川が生まれる。
香里はゆっくりとファイナルベントのカードを装填した。
「流石に女の子相手にこの技を使うのはどうかと思ったけど、相手が北川君なら遠慮なく打てそうね……ファイナルベント! インフィニティフィスト!!!」
香里の背後に、香里に良く似た半透明な女性が浮かび上がる。
『嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いい嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い大嫌いっ!』
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!
香里そっくりの女性がジェノサイダー北川をタコ殴りにし、殴り飛ばした。
跡形もなく霧散し消え去るジェノサイダー北川。
「契約モンスターは契約している間は不死身、召喚すれば甦る……残念ね……まあ、割とスッキリしたから良いけど」
「……はぇー……なんで佐祐理に向けて打たなかったんですか……」
「あたしを殺してくれたあなたより、役立たずで鬱陶しい北川君の方がムカついたからよ」
「はぇー……」
「後はそうね……あなたとはもう少し後で戦った方が面白そうだからよ」
香里は妖艶な笑みを浮かべた。



























次回予告(美汐&香里)
「というわけで第17話をお送りしました。戦闘シーン入れるとそれだけで話が1話分終わってしまいますね」
「そうね。それにしても、オリジナル設定ヒロインの方は能力高すぎかしらね? 同じ第2段階でも、元ネタを参考に能力を極めた観鈴さんなんかは低めだし……」
「……とりあえず、元ネタと違って、全員の第2段階を考えてはいます。すでに亡くなってしまった方は第2段階になりようがないですけどね」
「まあその辺は仕方ないわね……」
「では、今回はこの辺で……」
「良ければ次回もまた見てね」
「戦わなければ生き残れません」



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