カノン・サバイヴ
第13話「未来視の怠惰な午後」





ファンシーアリクイ、メタル北川、みちるダイバーの3体の合体モンスター・ジェノサイダー北川が口から荷電粒子を吐きだす。
直撃を受ける栞。
唖然とする名雪達も、激しい爆発に巻き込まれる。
「えぅ〜!」
うずくまる栞に止めを刺そうとカードに手をかける佐祐理。
「栞ちゃん!」
「次で最後です♪」
その時、翼人に変身した観鈴の契約モンスター神奈がそれを阻止する。
「ファイナルベントがお……とぅ!」
低空飛行する神奈に飛び乗る、観鈴。
神奈はバイクに変化し、加速していく。
佐祐理もみちるダイバーのファイナルベントを装填する。
「んんにょわわっ!」
「あははーっ♪」
飛来するみちるダイバーに飛び乗る、佐祐理。
「翼人特攻!!!」
「ツインテールベノン♪♪♪」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

観鈴と佐祐理のファイルベントが正面から激突し、大爆発が起こった。



「真琴、バトルロイヤルで一番やってはいけないことはなんだか解りますか?」
赤い髪の少女は今日も怠惰に過ごしていた。
実際に怠惰かどうかはともかく、はたから見たら怠惰に過ごしてるようにしか見えないだろう。
読書と、真琴を可愛がること、この二つ以外のことは何もしていないのだから。
「あぅ?」
「答えは簡単です、全員を敵に回すことです」
右手で真琴の頭を撫でながら、左手で本のページをめくる。
「例え4人の中でもっとも強くても、3人全員と同時に戦って勝てるほど実力の差がなければ、3人全員と同時に戦えば負けます……当たり前すぎることですね」
白紙のページ。
少女が白紙のページを眺めていると、白紙に文字が浮かび上がっていく。
「ですが、その愚かな行為を押し通せるだけの実力が佐祐理さんにはあるみたいですね。名雪さん、観鈴さん、栞さん全員の戦闘力を単純な足し算で合計すれば、佐祐理さんを上回ってはいるのですが……」
「あぅ〜、美汐より強いの?」
「そうですね、能力を数値化して比べた場合、契約モンスターの数の分だけ佐祐理さんが僅かに上ですね」
「あぅ……」
真琴は心配そうな表情を浮かべた。
「心配いりませんよ、真琴。私と真琴2人で協力すれば余裕で倒せます」
赤い髪の少女、美汐は微笑を浮かべると、真琴の喉を撫でる。
「あぅ〜」
「もっとも、私一人でもおそらく勝てるでしょうけどね」
「あぅ? どうして? 佐祐理の方が強いんでしょ?」
「私は佐祐理さんの能力も性格も過去も全て知っている。でも、佐祐理さんは私のことを何も知らない……だからですよ」
「あぅぅ?」
真琴には美汐の言っている意味が解らなかった。
「それよりも問題は……第2段階になるためのカード……空と雪……そして……」



「脱落2名、積極的に参戦しているのは4名しかいません」
進行ペースが遅い。半数近くがいまだに参戦していないのだ。
「あたしはいつ参戦してあげてもいいのよ」
金髪の少女の背後に突然、声と気配が生まれる。
茶髪の少女。
自分ともっとも気の合わない相手だ。
「そうね、この辺で大きな刺激が必要かもしれない」
もう一つ気配が生まれる。
青い髪の少女。
自分が畏怖を感じるこの世で唯一の存在。
「それにしても、美汐さんにも困ったものね」
「潰し合って数が減るのを待つ……賢しい小娘の考えそうなことね」
「貴方や佐祐理さんと違って、考える頭があるということでしょう」
「……そんなに殺されたいの?」
「貴方こそ身の程を知って欲しいですね」
2人の少女から殺気放たれる。
もし、この場所に普通の人間が居たなら、2人の殺気だけで命を落としていただろう。
しかし、ここに居るのは、2人以上の化け物だけだ。
「作れる未来は3つか……」
青い髪の少女は2人の少女の殺気を涼しげに感じながら、思案に耽っていた。



爆炎をかいくぐり、名雪と観鈴はどうにか帰還する。
佐祐理の非人間的行為を目の当たりにした名雪の足取りは重い。
「名雪さん、観鈴ちんの言ったとおりだったね」
「なにが?」
「人間なんてそう簡単に変わるものじゃない。佐祐理さんは救いようのない極悪人だよ。一生改心なんてしない」
「まだ解らないよ……」
「名雪さん……まだ佐祐理さんを……」
「佐祐理さんじゃない、栞ちゃんだよ……」
名雪のセリフに、観鈴は失笑する。
「美坂栞? ある意味、佐祐理さんより可能性ないよ」
「笑ってていいよ、わたしだってもう考えるのが限界なんだよ……」



佐祐理との戦いで負傷した栞は、腕に包帯を巻き、不自由な生活を強いられていた。
利き腕ない方の腕で朝食を食べようとするが、フォークが上手くトマトに刺さらない。
「祐一さん〜、私、怪我人なんですから、もっと愛情のあるメニューが良いです」
「悪い、栞。でも、朝からカレーは嫌だって言ったのは、お前だろう?」
「えぅ〜! あんな辛い物、人間の食べ物じゃありません!」
朝だろうが、昼だろうが、夜だろうが、栞はカレー、辛い物は駄目だった。



祐一は栞に代わり、スーツ姿で仕事に出掛けていった。
片手では食事もままならない栞のイライラは募るばかり。
そこへ、真剣な面持ちで名雪がやってくる。
ヒロイン達のこれからについて懸命に語る名雪。
身じろぎ一つせず聞いていた栞は、ようやく顔を上げると「ヒロイン同士助け合いましょう」と、名雪に祐一が留守のあいだ臨時秘書を務めるよう提案する。
結局、栞にいいように丸め込まれ、身の回りの世話を焼くはめになる名雪だった。



「君が栞先生? 例の裁判の件で挨拶によらせてもらったよ」
そこへ強面の部下を引き連れ、栞と敵対する久瀬という弁護士がやってくる。
大滝には、彼を狙うモンスターの気配が付きまとっていた。
脅迫まがいの会話を終え、事務所を出ていく久瀬。
栞は自分をおぶって、久瀬の後を追跡するよう名雪に命じる。
「意外だね、栞ちゃんだったら、あの人見捨てると思ったのに……」
「いいですか、私の所から帰りに行方不明になられたら、私が疑われるんですよ!」
今、久瀬に何かあったら、自分に疑いがかかり裁判も不利になる、それが理由だ。
名雪は返す言葉もなかった。


「やっぱり、事務所に戻ってアリバイ作りをしましょう」
栞は名雪の首を絞めて急ブレーキをかける。
「だお……駄目だよ〜そんなことしちゃ。あの人がモンスターに……」
「あんな人一人行方不明になっても誰も心配しないですよ」
「なんでそんなこと解るの?」
「だって、あの人悪人顔ですよ! 嫌みな性格してますよ! たまえ言葉とか使うんですよ! 絶対友達の一人も居ません!」
「それは否定しないけど……わたしは助けたい。わたしは、人を助けるためにヒロインになったんだから」
『誰かを守るためだけに変身する』……自分の言葉を思い出す名雪。
久瀬達にハメられボコボコにされても、名雪の意志は変わらない。
モンスターにエターナルワールドに引き込まれた久瀬を助けに行こうとする。
栞は呆れ顔だが、しぶしぶと包帯をほどき、名雪と2人、ミラーワールドへと渡っていくのだった。



エターナルワールドで、モンスターを相手に、名雪と栞の戦いが始まった。
「えぅ〜!」
しかし、腕が痛む栞は、カードの装填すらできない状態。
「栞ちゃん!」
栞が落としたカードを拾い上げる名雪。
すると栞は「あなたが使ってください」と、自分のカードを名雪に託す。
意気に感じ栞のカードを装填する名雪。
「シュートベント! 雪玉キャノン! カモンだおっ!」
が……現れた雪玉キャノンは、栞は装着される。
「ふふふっ」
「えっ!? それ、わたしが……」
「邪魔ですよ」

ズドオン! ズドオン!

「次はこれです」
「オッケイだお! ガードベント! ギガストール! よっしゃこいだおっ!」
しかし、今度もストールは栞の所に現れ、無防備な名雪にモンスターの攻撃が直撃。
「だおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
つまり、栞は攻撃も防御もできるが、名雪はノーガードのままモンスターの攻撃を受けてしまうのだ。
混乱する名雪に、次々に自分のカードを渡す栞。
名雪もつい反射的にカードを装填してしまう。
「はい、次これです」
「栞ちゃん、いいかげ…………アドベント! よしっ!」
しかし、ヘビースノーマンを呼び出すと、名雪は栞を押しのけヘビースノーマンを盾に使いモンスターの攻撃を防いだ。
「ヘビースノーマンを盾に!?」
「そういうとだお! ストライクベント! ケロピー特攻!!!」
最後は自分のストライクベントを装填、モンスターの撃破に成功する、名雪。
「やってくれますね、名雪さん」
栞も意外に逞しい(賢い?)名雪に苦笑するのだった。



同じ頃、佐祐理が脱獄した時のビデオをチェックしていた祐一は、拘置所のガラスを横切る青い髪の女性を発見する。
「これって……まさか!?」















次回予告(美汐&香里)
「というわけで第13話をお送りしました。何だかんだでまた元ネタ忠実な話やってますね」
「だって、この回、ものすごくナイスな話だっから……というわけで、栞&名雪コンビ共闘話をお送りしたわ」
「栞さんもすっかり、この性格が馴染みましたね」
「元からあの子はこんな感じよ……小悪魔よ……」
「実感こもってますね……まあ、佐祐理さんに比べたら全然可愛い性格ですね」
「佐祐理さん、あの性格割とウケが良いみたいだから、このまま突っ走ることにしたわ」
「ところで、黒幕さんの正体解らないという意見が数回あったのですが……」
「意外ね……とことんモロバレだと思ったのに……」
「いえ、多分、解らないんじゃなくて、『知らない』んじゃないかと……」
「……そんなにマイナーになるの?」
「まあ、今回の話のラストか、次回予告でばらしても良かったんですが……とりあえず、次回まで勿体ぶることにします」
「で、次回だけどどうするの?」
「忠実じゃない展開を2種類ほど思いついてるのですが……忠実を含めて3種類のどれでいくか悩んでます」
「ふむ…………あれ? ところで今日何日だっけ?」
「9日ですが、それが何…………あっ!」
「今日、夏コミだったわ!」
「不覚です……まだサークルチェックもしてません……」
「終わったわね……いっそのこと行くの辞めようかしら……」
「小さな即売会とは違います! コミケは年に2回しかないんですよ!」
「う……それを言われると……もうこの時間(現在早朝)からすごいんでしょうね……」
「では、今回はこの辺で……さあ、香里さん急いで仕度を!」
「解ったわ! じゃあ、良ければ次回もまた見てね」
「戦わなければ生き残れません」


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