カノン・サバイヴ
第7話「ヒロイン集結!」





「あははーっ♪ 美坂栞とかいう弁護士を連れてくるんです♪ そうしないとみんな燃やしちゃいますよ♪」
ファミレスに立てこもった佐祐理から要求が出される。栞を連れてくること。
警察からの要請を受けた栞は、危険を承知しつつも、全国規模の騒ぎに乗じ自分を売り込もうと、単身、現場に乗り込むことにしたのだった。



水瀬家に帰ってきた観鈴と美凪を出迎えたのは、
「おかえりなさい」
香里だった。秋子の姿はどこにもない。
佐祐理が立てこもるファミレスを舞台に、ヒロイン同士のバトルゲームを始めようと企んだ香里は、性懲りもなく観鈴と美凪を誘いに来たのだ。
はじめから戦いを容認しない美凪は、即座に断る。
「そういえば秋子さんはどうしたのかしらね?」
香里がからかうように、秋子のエプロンを2人の前でちらつかせる。
香里は、観鈴達に戦いを強要するため、秋子を人質として別の場所に監禁していたのだ。
「じゃ、待ってるわね」
そう言うと素早く水瀬家を出る香里を追って、観鈴が動く。
美凪の制止は、もはや効かない。覚悟を決めたかのように走り出す観鈴を追って、美凪もまた現場へと向かうのだった。



「あははーっ♪ もう人質はいりませんね♪」
栞が到着すると同時に、人質を全て焼き払う、佐祐理。
「そんな非道いことする人嫌いです」
その瞬間、外から催涙弾が打ち込まれる。
白煙の中でニヤソと笑う佐祐理が栞を挑発する
「カモンです♪」
2人は次々に変身し、エターナルワールドへ渡っていく。


一方、いよいよ始まった戦いを、さも楽しそうに見つめている香里の元へ、観鈴がようやく現れる。
観鈴は、人質の有無に関係なく戦うことを香里に伝え、秋子の居場所を聞き出す。
秋子の美凪に任せ、香里とともにエターナルワールドへ渡る観鈴。
香里の思惑通り、バトルゲームが始まってしまうのだった。



「あははーっ♪ マジックベント♪ さゆりん☆サンダー♪」

ズガアアアアアアアアアアアン!

「えぅ〜!」
「マジックベント♪ さゆりん☆ブリザード♪」

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

「えぅぅっ!?」
「とどめです♪ マジックベント♪ さゆりん☆フレア!」
「ガードベント! ストールアーマーですぅ!」

カツッ!

「えぅ!?」
超高熱が栞のストールを溶かした。
「あははーっ♪ 佐祐理の情熱の前ではそんな布切れ何の役にも立ちませんよ♪」
「言いましたね……ならば、今度はこっちの番です! シュートベント! 雪玉キャノン!」

ズガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

「思い知りましたか? これが私の実力です」
両肩に装着された二門のキャノン砲から発射された爆薬入りの雪玉は佐祐理に直撃したように見えた。
しかし、爆炎の中から「あははーっ♪」といった笑い声が響いてくる。
「あははーっ♪ 今、何かしたんですか?」
「そんな……直撃したのに……」
爆炎が晴れると、無傷の佐祐理が立っていた。
「さゆりん☆バリアの前ではそんな玩具の大砲役にたちません♪」
「えぅ〜……シュートベント! 雪玉ランチャー!」

ズガン! ズガアアン! ズガアアン!

雪玉が次々に佐祐理に向かって発射される。
「無駄無駄無駄です♪ ガードベント♪ さゆりん☆バリア♪」
しかし、全ての雪玉は佐祐理の直前で七色に輝く半透明な障壁に阻まれてしまった。
「あははーっ♪ 大砲が通じないのに、それより威力の劣る武器が効くわけないじゃないですか♪ ふぇ? もしかして、あなたお馬鹿さんなんですか?」
「えぅ〜〜……」
栞vs佐祐理の戦いは、明らかに佐祐理が優勢のようだった。



「ガードベント! がおがおマント!」
背中のカラスの翼がマントに変化し、観鈴を包み込む。
「無駄よ……コンファインベント! 全ては無意味よ!」
香里がカードを発動させると同時に、観鈴のマントが消滅した。
「ストライクベント! 北川ホーン!」
「がおっ!?」

ズドオオオオオオオオオオオオオン!

「…ガードベント……巨大お米券です」
「くっ! あなたも居たわね……」
観鈴への攻撃は突如現れた美凪に遮られる。
「…秋子さんは助けました、安心してください、観鈴さん」
「良かったがお……」
「まさか、あなた達、2対1なら、あたしに勝てるなんて思ってないでしょうね」
香里は余裕の表情を浮かべていた。
「…ファイナルベント……」
「にょわわわああああああああああああっ!」
「コンファインベント! 無効よ!」
「にょわわああああああああっ!?」
「…みちるがキャンセル(消)されました……」
「二人まとめてかかってきなさい。格の違いを教えてあげるわ!」



現実世界では、ヒロイン同士の戦いを見つめる『だけ』の祐一が、認めがたい状況に胸を痛めていた。
するとその時、ガラスの中に少女が現れる。
走り寄ろうとする祐一。
しかし、少女の姿はすぐに別のガラスへと移ってしまう。
現れては消え、消えては映る少女の像が、祐一に語りかける。
「この戦いは祐一さんには関係ないのよ。ヒロインは、それぞれが求めるもののために自分の意志で戦っている、その戦いを止める権利は誰にもないのよ……」
消え去る少女。
祐一はただ、立ち尽くすのだった。



「さよならよ、がおがお娘! ファイナルベント! 触角プレッシャー!!!」
「しまったがお!?」
「…神尾さん!」

「ケロピーシールド!!!」

ガオコオオオン!

駆けつけた名雪が身をていして観鈴を守ったのだ。
「名雪……とことんまであたしの邪魔をしてくれるわね……」
「観鈴さんのために……ヒロイン同士の戦いを止めるために……わたし、香里と戦う」



「あははーっ♪ ソードベント! さゆりん☆ソード♪」
「えぅ〜……」
佐祐理に間合いを詰められ、一瞬よろめく、栞。
「こういうゴチャゴチャした戦いは好きじゃないんですよ! ファイナルベント! エンド・オブ・スノー!!!」
「ふぇ!?」

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!

ヘビースノーマンの雪玉全弾発射が炸裂する。
凄まじい爆炎に佐祐理だけでなく、観鈴達も巻き込まれていく。
しかし……。
「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」
「く……ぅ……栞……」
「お姉ちゃん!?」
煙りが晴れると、倒れ伏している名雪、観鈴、美凪の中にあって、なぜか佐祐理だけは悠然と立っている。
佐祐理は、香里を盾として使いダメージを免れたのだ。
「ガードベント! 使い捨てかおりんです♪ あはははーっ♪」
「あ……あたしが……演出して……ゲームを面白くしてあげたのに……」
荒い息づかいで、それでも佐祐理に立ち向かう香里。
「あははーっ♪ 冥土の土産に見せてあげます佐祐理の大魔法を♪ ファイナルベント♪」
空高く舞い上がった佐祐理が巨大なアリクイのぬいぐるみのバックアップを受けて急降下してくる。無数の隕石と共に……。
「さゆりん☆メテオキック♪♪♪」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

香里がこの世に存在していた痕跡は何一つ残っていなかった。
髪の毛一つ残さず香里は完全に消え去っている。
「お姉ちゃん……」
「香里……嘘だよね……」
驚愕する名雪と栞。
「あははーっ♪ 最高にハイな気分ですよ♪」
しかし、佐祐理は平然と戦いの味をかみしめている。
「……許せないよ……」
怒りで佐祐理を睨む名雪。
「あははははーっ♪」
飛来するジークケロピーとファンシーアリクイを背後に、両者は対峙する……。









「人生なんてバットエンドしかないクソゲーよ…」
その子は希望や奇蹟などといったものを拒否していた。
いや、拒否したかったのだろう。そんなものがあるから、いつまで経っても絶望することが、完全に諦めることができない。
無気力、自暴自棄、いや、どれも違う。だが、どれでもある。
とにかく、彼女は嫌気がさしているように見えた。
助からない妹に、妹を救えない自分に、希望も奇蹟も存在しないこの世界自体に……。
自嘲と自虐、その二つだけを友に……醒めきった瞳でこの世界を見ている。
全てのものに期待をせずに、けれど、絶望しきれずに……。



「贔屓がすぎるのでありませんか?」
「まだ使い道があるから……よ。せっかくまいておいた種と用意したカードが無駄にならないように……」
「彼女はあそこで死ぬ『予定』だったはずですよ……ずっと前から」
「彼女の生死は関係なく予定は進むわ……」
「まあ、あなたのゲームですからどうしようが自由ですが……収拾つかなくなっても知りませんよ」
「私は……無駄な種まきはしないの……用意した道具が使われることもなく消えるも許せない……」
「ただの快楽目的の玩具ではなかったのですか?」
「………………」
「まあ、もうじき『白紙』に辿り着きますし……この選択は選択で面白いことになるかもしれませんね」
そういうと女性の気配は消える。
残されたのは少女と、壊れてしまった少女のお気に入りの玩具だけ……。














次回予告(美汐&香里)
「というわけで第7話をお送りしました。今回はついに忠実なフリをしていながら、実は原作逸脱ですか?」
「………………」
「では、香里さんの冥福を祈りつつ……今回はこの辺で……」
「……終わるんじゃないわよ」
「おや、ゾンビ化したんですか、香里さん?」
「別に本編で死んでも次回予告は別よ!」
「そうなんですか?」
「そうよ! そうじゃなかったらリナ猫の雪国編で佐祐理さん以外全員無くなってるじゃない!」
「そういえばそうですね。では、話を戻して、今回は元ネタ1話分で1話終わってしまいましたね」
「そうね、いつもは2話分、多ければ3話分いくのにね……」
「まあ、戦闘シーンが多かったですから……戦闘シーンとダイジェスト的ストーリーだけって気がしないこともないですが……」
「それは言うんじゃないわよ……」
「ところで、ラストのいやらしい部分についてなんですが……」
「いやらしいって言うなっ!」
「では、アダルトタッチな……」
「それって同じ意味じゃ……」
「まあ、とにかく、その辺の部分は、原作忠実が良い方は見なかったことにでもしておいてください」
「また?」
「実は今回、最大のターニングポイントだったんですよ。香里さんの生死がイコール、原作忠実、オリジナル展開の分岐点……」
「で、結局どっちなったのよ?」
「いつでもオリジナルルートに飛び移る用意をしながら、もう少し原作忠実ルートを通ります」
「……思いっきりの悪い……」
?「うぐぅ! その通りだよ!」
「また出た……」
?「いいの美汐ちゃん、原作忠実ルートである限り、美汐ちゃんと真琴ちゃんには出番は数ヶ月はまずないんだよ!」
「それほど酷なことはないでしょう……」
?「オリジナル展開なら、いますぐ、ボクや美汐ちゃんが登場可能なんだよ!」
「やけに力説するわね……」
?「うぐぅ!? そんなことないよ……別に、次の登場ヒロイン候補からボクが外れたから焦ってるわけじゃないんだよっ!」
「外れたのね……」
?「うぐぅ……だって、オー○ィンってラスボスみたいなんだもん……となると演じるのは当然あの人になっちゃうんだよ!」
「まあ、まだちょっと先の話でしょ? 次回は多分、観鈴さんの話だし……」
「いえ、正しくは美凪さんのラストの話です」
?「うぐぅ、ボクを無視しないでよ」
「早く本編出ればいいってもんじゃないわよ。佳乃さんなんて今後二度と……良くて回想しか……出れないのよ!!!」
?「うぐぅ!?…………そうだね、ボク、わがままだったよ……」
「解ればいいのよ、解れば……さっさと消えない」

ドカアアアアアアアアア!

?「うぐうううううううぅぅぅぅぅぅっ…………☆(星になる、うぐぅ)」
「邪魔者が消えたところで真面目な話なんだけど……」
「はい?」
「あんたの言ういやらしい部分?や、佐祐理さんの凶暴さがちょっと拙い……かなとか思わない? この作品、ダークSSとか、壊れ系SS扱いされちゃうのかしら?」
「大丈夫ですよ、誰が見ても、この作品は『ギャグSS』あるいは『クロスオーバー(パロディ)SS』にしか見えないでしょうから。シリアスSSとすら認めてもらえません」
「……それもそうね……それはそれでなんか悲しい気がするような……」
「首刎ねたり、内蔵えぐり出したり、本番シーンがあるわけでもないですからね」
「やけに具体的に例をあげるわね……」
「たまにそういうシーン書きたくなるんです♪」
「………………」
「そういう個性というか趣味を出しすぎるとヤバイので、元ネタというか元ストーリーがあるものを書いてるわけです」
「そうだったの?」
「五割ほど本気と書いてマジと読みます」
「てっきり、オリジナルのストーリーを考える頭が無いからだと思ってたわ……」
「それが残りの五割です」
「………………」
「………………」
「……じゃあ、今回はこの辺で、良ければ次回もまた見てね」
「戦わなければ生き残れません」




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