カノン・サバイヴ
第6話「嘆きの観鈴ちん」





「がお……」」
香里の喉元に突き付けられた観鈴の剣。その切っ先がわずかに震える。
とどめが刺せない・・・?
「……フッ」
香里は鼻で笑うと、剣を払いのけて、北川ホーンを撃ち放つ。
「がおっ!?」
「観鈴さん!」
助けようと飛び込んだ名雪と共に派手に吹き飛ぶ、香里。
その時、観鈴の脳裏に美凪の言葉が木霊した。
『…ホントに人を殺せますか?』



それぞれ傷付き帰還する名雪、観鈴、香里。そして合流する美凪。
そんな中、香里は、ひときわ深く傷付いた観鈴を見下し、冷笑を浮かべる。
「所詮……ただの甘ちゃんね……」
「が、がお……」
傷を押さえ、目を閉じるだけの観鈴。
「人の命奪えないのが、そんなにおかしいの、香里!」
「名雪……あたしはいくらでも奪えるわよ。それが必要なことならば……例え、親友のあなたや最愛の妹の命でもね……」
香里の瞳は恐ろしいまでに冷め切っていた。どこか哀しげにも見える瞳。
香里は、観鈴に一瞥かけると、立ち去ろうする。
その時、美凪の手からコインが投げられる。
「…国家の犬に注意……断ち切れない血の縁……ラッキカラーはピンクです……」
「悪いけど、あたし占いは信じない主義なのよ」
香里は美凪の占いにも一切耳を貸さず、立ち去るのだった。
ところが、ほどなく行くと淳の前に刑事が現れる。
「フン、占いも当たることがあるのね……」
取り調べを受けるため警察に連行されていった。



名雪と美凪が観鈴を抱えるようにして水瀬家に帰った。
ベッドに運び込まれた観鈴は、堅く目を閉じ、運ばれた食事にも手をつけない。
階下では、美凪が名雪に、観鈴の運命について聞かせていた。
「…戦うも破滅……戦いを止めるも破滅です……ラッキーカラーはモスグリーン……」
「簡単に言うわないでよ。こんな占いで!」
美凪は冷静に続ける。
「…私の占いは百発百中です…えっへん……」
だからこそヒロインの運命を変えようと思っていると。
自分の運命は自分で決めると言い放つ、名雪は、占い(お米の導き)にすがる美凪の生き方を「情けない」と言い捨てる。
その言葉に、美凪の顔色が変わる。
「…お米は絶対です!」
初めて険しい表情を見せる美凪。
「朝はトーストだお! イチゴジャム美味しいお〜っ!」
名雪も一歩も引かない。
その夜、さまざまな思いが交錯する水瀬家で、名雪達は眠れない夜を過すのだった。



翌日、一緒にいた名雪と美凪の近くで、モンスターの接近音が響きはじめる。
「だお!」
「…………」
お互いうなずき合い、エターナルワールドへと渡っていく2人。



こっそり水瀬家を抜け出していた観鈴も、モンスターの接近に気がつくと、迷いを振り切るようにカードデッキを取り出す。
しかし、
「……もうゴールしてもいいよね、お母さん……」
観鈴は変身することもできず、その場に崩れ落ちるのだった。



モンスターを追いエターナルワールドにやってきた名雪と美凪だが、素早い動きに攻撃は全てかわされてしまう。
相手の読めない動きに翻弄される名雪と美凪。
その時、名雪は美凪を踏み台にして高くジャンプすると、壁に張り付いていたモンスターを蹴り落とした。
名雪の意外な行動に戸惑いつつも、美凪は
「…天才です……えっへん」
天才のカード(コピーベント)を抜き、名雪のストライクベントをコピー。
2人同時にケロピー特攻の攻撃を放つ。
巻き起こる大爆発。
だが、一瞬早く身をかわしたモンスターは2人を残して逃走してしまった。



「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」

ガン! ガン! ガン!

「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」

ガン! ガン! ガアン!

「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」

ドカアッ! ドカアアッ! ドカアアア!

鉄格子に手刀を叩き込んだり、壁をけ飛ばしていた佐祐理に、弁護士との接見が告げられる。
ゆっくりと振り向く佐祐理。
「イライラするんですよ♪ こんな所にいると……佐祐理はこれでもお嬢様なんですよ♪」
その時、刑務所全体には、モンスターの接近音が響きはじめていた……。



刑務所の面会室。
佐祐理と向き合う栞が、判決内容を告げている。
「懲役10年です」
「ふぇ!? 佐祐理は何も悪いことしてないですよ♪ 寧ろ良いことしたんです♪ 悪者を殺っけまくったんですよ♪」
不服を申し立てる佐祐理。
だが栞は相手にせず、次の依頼人、元へ向かうため刑務所を後にする。
その時、ふと聞こえてくるモンスターの接近音。
辺りを見回す栞。
だが、すでに気配はない。
「気のせい……ですね」
栞を乗せた車が走り去ると、そこには一人の少女の姿があった……。



香里が拘留されている警察署前。
香里は栞の手腕で、あっさり釈放される。
だが、栞には気になることがあった。
押収された香里の荷物の中に、カードデッキを見つけていたのだ。
「これ……お姉ちゃんの物って思っていいのかな……」
香里に問いかける栞。
視線をかわしながら、2人はお互いがヒロインであることを理解する。
すかさずポケットに手を入れ、戦いの意志を示す栞。
が、香里が待ったをかけた。
「あたしが大切な妹のあなたと戦えるわけないでしょ」
そう言うと、香里は栞に背中を向け歩き去っていく。
その顔に、笑みを浮かべながら。
「あたしに妹なんていないのよ……栞……」



「あはははーっ♪」
謎の少女から魔法少女に変身するカードデッキを貰った佐祐理は、刑務所を破壊しながら突き進んでいた。
「邪魔する物も者も全て皆殺しですよ♪ こんなに楽しいのは久しぶりです♪」
さゆりん☆ファイアが全てを焼き尽くす、看守も囚人も例外なく。


騒ぎを聞き、急ぎドアを開けた栞にも、魔法のステッキが振り下ろされる。
「えぅ〜!?」
殴り掛かってきたのは勿論佐祐理だ。
「あははーっ♪ あなた悪人ですね♪ いかにも小悪魔的な顔をしています♪」
そこへ、遠くパトカーのサイレンが聞こえてくる。
「あははーっ♪」
佐祐理は狂ったように笑いながら、逃走した。



祐一からの連絡で、佐祐理の現在地を確認した名雪は、すぐさまダッシュ(走って)で現場を目指す。
だが、その途中、この前逃がしたモンスターが出現。
名雪はモンスターが客たちを狙っているファミレスへと向かった。




逃走中の佐祐理が、ファミレスの中から漂うモンスターの気配に気付いていた。
だが、佐祐理はまだその意味を知らない。
その時、
「ヒロインのくせにモンスターも知らないの?」
と香里が声をかける。
栞を襲う佐祐理の様子を偶然にも目撃していた香里は、佐祐理に栞もヒロインであることを教え、2人を戦わせようと企む。
香里にとっては、栞もゲームの獲物にすぎなかった。



その頃、名雪はエターナルワールドでモンスターと戦っていた。
だが、素早い動きのモンスターに、名雪は組み敷かれてしまう。
その時、モンスターが何者かに吹っ飛ばされる。
「こんな雑魚にやられないでよ、名雪……いろいろと演出して準備してるあたしの苦労が台無しになるでしょ……」
香里の言動や目的はともかく、貰ったチャンスを逃す、名雪ではない。
「ケロピーキック!」
モンスターに必殺技を決め、戦いに終止符を打っのだった。


ホッとひと息付き、現実世界へ戻ってくる名雪。
が、店内へ行こうとして、その異様な光景に「だお……」と足を止める。
佐祐理が人質をとり、立てこもっているのだ。
周囲は、大勢の警官隊、警察車両、救急車、マスコミとやじ馬で騒然としている。
その中で、ひとり満足そうな笑みを浮かべる香里。
「最高ね……あなた……」。

ただならぬ状況に名雪は、ただ呆然とするしかなかった……。





おまけ(蛇足)。
物腰が上品な少女(自称)は神社の掃除をしていた。
あぅーな少女は丘の上で昼寝をしていた。
食い逃げ少女は今日も元気に食い逃げをしていた。
彼女達三人の出番は当分無い……。




次回予告(美汐&香里)
「というわけで第6話をお送りしました。今回は原作通り……ですね?」
「まあ基本的にそうね。で、ついに第1話の部分を追い抜けたわけね」
「はい、警察署前での美坂姉妹の化かし合いの後に佐祐理さん脱走までの話(第1話)が入るわけです」
「化かし合い……」
「性格腹黒い姉妹が互いの悪意や殺意を隠して会話しています」
「そこまで言う……」
「小悪魔な妹と、野望のためならどこまでも冷徹な姉……嫌な姉妹ですね」
「あんですとっ!?」
「まあ、それはともかく、第1話の名雪vs香里の部分は、香里さんの手助けで名雪さんがモンスターを倒した後、香里さんが名雪さんをいびっていったとでもお思いください」
「どんどんあたしの印象が悪くなるような言い方するわね……」
「いいじゃないですか、悪役の方が人気出ますよ」
「……ほんと?」
「ええ、香里さんなんてもともと存在自体がヒール(悪役)じゃないですか」
「……なんか、今回やけに毒が強いわね、あなた……」
「私はいつまで経っても本編に出れそうにないのに……香里さんが活躍してるのが許せない……なんてことはないですよ」
「………………」
「ちなみに第1話の舞さんの話は…………無かったことにしておいてください」
「なにっ!?」
「まあ、それは冗談ですが。元ネタとは完全に逸脱している部分の伏線なので、いつの時間軸でもいいんです、舞台裏(まだバトルに参加していない、舞)の話ですから……前回の冒頭と同じようなものです」
「……それはいいけど、謎のキャラって謎になってないような気がするんだけど……」
「香里さんのパトロン(愛人)はモロバレですね……」
「パトロンと言うなっ!」
「まあ、この作品のオチなんて大したものではないので、本気で謎にすることはないかと……」
「ミもフタもないわね……」
「ちなみに、第1話ラストの観鈴さんや美凪さんの話は……観鈴さんと名雪さんが出会う前、第2話(元ネタなら第1話)以前の話ですね」
「……まあ、結構苦しいけどなんとか矛盾なく繋げられたわね……」
「ええ。繋げたといえば、美凪さんと名雪さんの共闘シーンは最初省略してたんですけど、少し話が短く終わりそうだったのと、今後コピーベントを使う機会が二度となさそうなので一応追加しておきました」
「ふ〜ん、まあいいわ、じゃあ、今回はこの辺で……良けれ次回も見てね」
「いよいよ、次は香里さんの最後ですね♪」
「なっ!? 今、あなたなんて……」
?『…次回がこの作品最大のターニングポイントです……運命(元ネタ)を変えるも破滅(収集がつかなくなりかねない)……変えない(元ネタ忠実)も破滅(香里さんが)……さて、どうなりますか……』
「ちょっと、不吉な占いだけして帰らないでよ! 三流占い師!」
「戦わなければ生き残れません」



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