カノン・サバイヴ
第3話「四人目しおりん」





「…さん……さん」
「何?」
「数が合わなくありませんか?」
「そんなことはないわよ。だって、名雪、観鈴、佳乃、栞、美凪、佐祐理………(中略)……子とほら12人ジャストじゃない」
「13個あるのですが、デッキ……」
「あっ!?」
「やっぱり、どこかの妹の数と間違えてましたね……」
「……えっと……参加します?」
「謹んで遠慮させていただきます」
「…………スカウトにいってきます……」
「…………」
少女の気配が消えるのを確認すると、彼女はため息を吐いた。
神のごとき力を得ても、どれだけの年月を生き経験を積んでも、たまに抜けてるところは治らないらしい。
「仕方ありませんね……」
でも、少女のそんなところが彼女は嫌いではなかった。




「結局、栞ちゃんが一番悪いんじゃないのかな?」
「そうですかぁ? だってどうせ可哀想な投資家たちから騙し取った金ですよ? 私のアイスとしてお腹の中に収まったが世の中のためじゃないですか」
と、まったく悪びれるところなく言う、栞。
名雪はさっきまでこの栞という少女と一緒に黒服の連中に追われていた。
栞が無罪にしたある企業が不等に手に入れた金を、栞本人が全てアイスに変えてしまったからである。
「栞がバニラ味(白)と言ったらチョコ味(黒)もバニラ味(白)なんですよ」
という決めセリフで有名な美少女弁護士、美坂栞。
「アイスはバニラなんですよ! それ以外は邪道です!」
『うぐぅ! あんこ以外のタイヤキなんて邪道だよ!』
「……今、幻聴が聞こえたような……」
「どうかしたんですか、名雪さん?」
「ううん、なんでもないよ…………だおっ!?」
名雪はモンスターの気配を察知した。


一体のモンスターを逃がし、もう一体のモンスターの後を追う名雪。
「シュートベント! 雪玉ランチャー!」

ズドオン!

一撃で吹き飛ぶモンスター。
メイド服を着た謎の少女は爆炎の中を静かに歩み去っていく。
「あれが四人目のヒロイン……」
名雪はその後ろ姿を呆然と見送った。



「栞はなんで弁護士になったんだ?」
「カッコイイからです。お金にもなるからアイス代にも困りません」
「そ、そっか……」
「私は全ての欲望を満たしたいんです。思い残すことがないように……」



その頃の観鈴ちん。
「いらっしゃいませがお」
百花屋でウェイトレスのバイトをしていました。




「ケロピーキック!」

ズドオオオオオオオオオン!

「ふう、やっと倒せたよ……」
この前逃がしたモンスターをやっと倒し、名雪が安堵した瞬間、

ズドオオオオオオオオン!

「だおおっ!?」

凄まじい爆発が名雪の足下で起きる。
物陰から名雪とモンスターの戦いを見ていたメイド少女が攻撃してきたのだ。


ズドオオン! ズドオオン! ズドオオン!

「だおっ! 飛び道具なんて卑怯だお!」
「それなら、ストライクベント! ストールドリル!」
出現した巨大なストールがドリルのように変化し名雪を貫く。
「さらに、ソードベント! ストールブレード!」
「きゃあっ!」
今度は刃と化したストールが名雪の腕を切り裂いた。
「ストライクベント! ストールスライサー!」
「きゃあああああああああああああああああっ!」
圧倒的な少女の力の前に、名雪は逃げ延びるのが精一杯だった。



次のメイド少女の標的は観鈴。
観鈴が追ってきたモンスターなど目もくれず、観鈴に攻撃をしかけてくる。
ヒロイン同士のためらいを持たない観鈴は次々に技を発動させて応戦した。
「トリックベント! ゲルルンイリュージョン!」
「無駄です」

ズドオオン! ズドオオン! ズドオオン!

「がおっ!?」
メイド少女……栞は観鈴を分身ごと全て吹き飛ばす。
「あなたも敵じゃないです」
雪玉ランチャーを発動しトドメを刺そうとするメイド少女、しかし、二人の体が薄れ始めた。タイムリミットである。


傷つき、元の世界に帰還した、観鈴。
その前に、平然とした栞が現れる。
「ヒロイン同士は共存できないのに、あなたはなぜ名雪さんと一緒にいるんですか?」
「………………」
「あなたは何のために戦ってるんですか?」
「………………」
何も答えない観鈴に、呆れたように立ち去ろうとする、栞。
「待つがお! あなたは何のために戦ってるの?」
栞は立ち止まり振り返ると、笑みを浮かべて答えた。
「決まっています、永遠の命を手に入れるためです」
「永遠の命……」
「私は自分のため『だけ』に戦っています。だから、一番強いんですよ」
「…………」
「自分のためだけに戦う者が一番強い……それが解らない、あなた達はヒロインとして青臭いです」
そう言い捨てると、栞は心底嫌気がさした表情で立ち去っていった。


栞は祐一と中庭で楽しげにアイスを食べていた。
その様子を校舎の中から見つめていた、香里が呟く。
「馬鹿な子……もうすぐ死んじゃうのに……なに普通にふるまってるのよ……」



「モンスター反応だお!」
名雪と観鈴はモンスターを追ってエターナルワールドへ突入した。
名雪と観鈴がモンスター相手に苦戦している所に、栞が現れる。
「あなた達の青臭さ……お友達ごっこにはうんざりなんですよ…………ヘビースノーマン!」
栞の横に、巨大な雪だるまが出現した。雪だるまは体中に氷でできた重火器を装備している。
「ファイナルベント! エンド・オブ・スノー!」
雪だるまに装備された雪玉ランチャー、雪玉キャノン! 全ての火器が同時に雪玉を発射した。石の代わりに火薬を詰めた雪玉を……。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

その攻撃はモンスターを跡形もなく破壊し、余波で名雪も観鈴も吹き飛ばした。
地面に強く叩きつけられた二人は微動にしない。
「もう二度と会うこともありません」
栞は勝利を確認し、ゆっくりと歩み去っていった。




「ただいま」
「おかえりなさい」
「ちょっと歳いってるけど、なんとか後一人候補を見つけてきた」
「歳……あなたが言いますか?」
「う……今の姿は若いのよ……ピチピチの美少女なのよ!」
「ピチピチ……その発言で歳がばれますよ」
「うっ!……それより進展はあったの?」
「数の変動はありません。積極的に戦う気のない方が多いもので……」
「仕方ない……危険な奴を投入するか……また出かけてくる」
「どちらへ?」
「刑務所♪」
裏方は裏方で結構忙しいようだった。
まあ、本人が楽しんでやっているのだから問題ないかと、傍観者の女性は思う。
それに、生き生きとしている彼女を見るのは悪くはなかった。







次回予告(美汐&香里)
「というわけで第3話をお送りしました。ここまでもほぼ原作通りですね」
「ついに03(重火器)役決定したのね……要望(アンケートトップ)どおり栞というわけね」
「ギリギリまで迷ったんですけどね、栞さんだと相方という対キャラがいないのでゴロちゃんが……という部分が」
「あなた(美汐)と真琴のコンビの方が掛け合いになって面白いような気もするわね……一人ヒロイン扱いから降板することになるけど……」
「まあ、ゴロちゃん(弁護士の恋人兼下僕)無しの方向で……」
「ところで、2話目もそうだったんだけど、結構ダイジェストぽくなっちゃってるから、原作知らない人は楽しめない(解りづらい)かしら……?」
「日常のシーンを殆どカットしてますからね。ただですら人数いっぱいいっぱいですから、ヒロインでない脇役まで登場させて日常やるのは無理が……本来脇役の私や香里さんもヒロイン(戦い合う13人)に入ってますから……脇役やるキャラは残ってません」
「まあそうよね」
「ああ、ちなみに相沢さんは某記者(女性)あたりだったり、下手すれば某妹役まで……まあそんな感じの位置の役です」
「性別が逆ね、元ネタと……」
「相沢さんをゴロちゃんにしちゃおうかとも一瞬思わないこともありませんでした」
「それはまた……なんというか……」
「下手をすれば今後ゴロちゃん役まで兼業することになるかもしれません」
「相沢君も大変ね……」
「それと、皆さんの職業ですが、元ネタの方ではなく、カノンの方を優先しています、つまり皆さん、学生ですね」
「栞だけ弁護士も兼業してるみたいだけどね……学校サボって弁護士してるわけ?」
「高校生が弁護士になれるわけないだろうというツッコミは無しです。話の都合で名雪さんが新聞記者もやっていると途中でいきなりなるかもしれませんが、その場合はご了承ください」
「そうそう、気づいてない人はいないと思うけど、時間軸が第1話は第2話と第3話より先なのよ。最近のアニメでよくある手法ね。第1話はかなり先の話(キャラが出そろってる頃)から始まるパターン。ホントの意味の最初の話は第2話ってわけね」
「最近の新番組アニメの80%以上がこの手法でしたね……」
「その方が視聴者をつかみやすいからでしょ? 本格的に登場してくるのが先のキャラでもちらりと登場させておけば……そのキャラに興味を持った人が、少なくともそのキャラが登場してくるまでは見てくれるから……」
「小賢しい手段ですね」
「まあ、どっかのワルキューレみたいに、残りのワルキューレ全員登場しなくていいです……なんて感じのもあるけどね」
「では、話がずれ過ぎる前に今回はこの辺で……」
「そうね、良ければ次回も見てね」
「戦わなければ生き残れません!…………毎回同じセリフでいいと楽ですね」




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