カノン・サバイヴ
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冬の刑務所。 「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」 この刑務所では時折、狂ったような女性の笑い声が響く。 もっとも、刑務所という場所を考えればそれほど珍しくも不思議でもないかもしれない。 狂人の一人や二人いてもある意味当然かもしれない。 「あははーっ♪……ふぇー……」 笑い声が止んだ。 笑い始めて早三時間、流石に笑い疲れたのか、狂人は小休止に入る。 狂人……いや、見た目とても狂人にも犯罪者にも見えない人物だった。 大きな緑色のリボン、音楽学校か、カトリック系の学校のような制服、要するに女学生である。 「あははーっ♪ 佐祐理は悪い人達を殺っつけただけなのに、なんでこんなところにいなければいけないんですか?」 狂人……改め少女は常に笑顔で、声にも常に笑いを帯びている。 しかし、間違っても機嫌が良いわけではなかった。 少女……倉田佐祐理はとてもイライラしていたのである。 「佐祐理には世界の平和を守る指命があるんです♪ こんなところで時間を潰すわけにはいかないんですよ♪」 佐祐理が新たな脱獄計画を考えようとした瞬間、 「そりゃいくら相手が悪人でも杖で何人も撲殺すれば投獄されるよね……」 佐祐理しか居ないはずの牢獄に一人の少女が出現した。 「ふぇ!? 誰ですか、あなた? いきなり沸いてでないください♪」 「沸いてでるって……人をボーフラみたいに……」 「あははーっ♪ 解りました、あなた佐祐理の悪霊(スタ○ド)ですね♪ ラジカセや雑誌なんか持ってきてくれ……」 「違う。まあ、弾丸を見切って、指で掴むぐらいならできないこともないけど」 「ふぇ? ホントですか?」 「なんなら、試してみる?」 「はい♪ さゆりんアタック♪」 佐祐理はどこからか取り出した鉄パイプで迷わず少女に殴りかかる。 スカッ! 「ふぇ!?」 鉄パイプは確かに少女に当たったように佐祐理には見えた。しかし、歯ごたえがまったくない。 佐祐理は再度鉄パイプを振り回す。しかし、何度やっても鉄パイプは少女をすり抜けてしまった。 「やっぱり、悪霊(ス○ンド)ですね♪」 佐祐理は、正体見破りました!といった感じで少女を指さす。 「あのさ……なんで鉄タイプ持ってるの?とか質問していい?」 「ふぇ? 魔法のステッキを没収されたから仕方なく使ってる代用品ですよ♪」 「……鉄パイプの方を没収しなさいよ……」 魔法のステッキ(多分玩具)より鉄タイプの方が凶器に違いないだろうに……ここの監視はどうなってるのだろう? 「まあいいわ、さっさと用件を済ませて帰るね……これ、プレゼント」 少女は佐祐理にカードデッキを投げ渡した。 「ふぇ? デュエルスタンバイですか? デュエルディスクはないんですか?」 「今、神を見せてやる! だよもんの巨……て違う! 日曜の朝8時の特撮見たことないの?」 「RX?」 「ロボライダー!? 何年前の番組よ……」 「あははーっ♪ なつかしですね♪」 「……まあ、そんなわけで、その憎しみではい上がれ!と言い残して、私は消える」 「ふぇ?」 「……ああ、もう、そのカードデッキは魔法少女の変身アイテムで、私は魔法の国からの使いとでも思ってくれれていいのよ……似たようなもんでしょ……多分……」 青い髪の少女は投げやりにそう言うと、現れた時と同じように唐突に消え去った。 「あははーっ♪ 最初からそう説明してくればいいのに♪ 魔法使いのおばさんはボケてますね♪」 佐祐理は慣れた手つきでデッキにカードをセットする。 どのカードを、どうやってセットして、その後どうすればいいのか、不思議なことに全て理解していた。 「変身です♪♪♪」 シャララララ〜ン♪ 「破壊と憎悪の名の元に♪ 白き淡雪の魔法少女まじかる☆さゆりんここに現臨です♪」 どこから誰が見ても『魔法少女』な衣装。 右手には魔法のステッキ。 だが、この衣装は今までのコスプレではなく、この杖は玩具ではない。 「マジックベント♪」 佐祐理はステッキにカードを一枚セットする。 「さゆりん☆ファイア♪」 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン! 「あははーっ♪ あははーっ♪ あははーっ♪」 この日、ある刑務所で大火が発生した。 囚人看守共に生存者0。もっとも死体が全て見つかったわけでないので全員死亡しとは言い切れないのだが……刑務所のあまりの惨状に生存者(生き残り逃亡した者)が居るとは誰も思わなかった。 「ファイナルベントだお」 カシャッ! 「ケロピーキック!」 「ガードベント! 北川シールド!」 「げべびゃあああああああっ!」 ズゴオオオオオオオオオオオン! 名雪の跳び蹴りで派手に吹き飛んでいく、北川。 常人なら即死間違いなし威力だった。 戦っているのは体操着にブルマの陸上部主将の名雪。 ゴスロリ(フリルの大量についた黒いドレス)を着こなした謎の部活に所属する少女香里。 二人は親友だった。 「さっさと立ちなさい、北川君! ファイナルベントいくわよ!」 「うぅ……美坂……」 香里は北川を一瞥もせず、カードをデッキにセットする。 タンッ! 香里は飛び上がると空中で宙返りし、立ち上がったばかりの北川の背中に着地した。 「触角プレッシャー!」 北川は、香里は背中に乗せたまま角……もとい、頭の触角を突きだし突進する。 [くっ! ガードベント! ケロピーシールド!」 ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン! 名雪がとっさに盾として召喚したケロピーのぬいぐるみが粉々に吹き飛ぶ。 「だおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」 名雪を弾き飛ばした北川はそのままビルを破壊しながら消えていった。 「ふん……」 いつのまにか北川から降りていた香里は、体についてた埃(主にケロピーの破片)を払う。 「うう……なんでこんなに能力差があるんだお……?」 「覚悟の差よ……さ、名雪トドメを刺してあげるわ……ん、時間切れか……運がいいわね、名雪……」 踵を返し去っていく、香里。その後ろ姿がゆっくりと景色にとけ込むように消え去っていった。 「なんで……戦わなきゃいけないのかな……香里……」 体中が痛む。でも、自分の方もタイムリミットが迫っている。 早くこのエターナルワールド(永遠の世界)から出なくては帰れなくなってしまうのだ。 「痛いよ〜」 名雪はふらつきながらも歩き出した。 夜の校舎。 「………………」 舞は剣を抱いて壁際に座り込んでいた。 「…………んっ!」 舞は唐突に剣を鞘から抜くと横の空間を切り裂く。 「ちょっと危ないじゃないの」 舞の切り裂いた空間に青い髪の少女が立っていた。 「魔は滅ぼさねばならない……」 「それセリフが違うでしょ……『私は魔を討つ者だから』でしょ?」 「……やりなおす?」 「いや、別にやり直してくれなくてもいいんだけど……」 「そう……」 それっきり舞は黙り込む。 「ねえ、なんで私のあげたカードデッキを使わないの?」 仕方なく、少女の方から話しかける。 「……必要ない……」 「ホントに?」 「………………」 「……まあいいけどね。あなた強すぎるし後半戦から参加した方がいいかもしれないし……」 「…………」 「それにあなたは特別……あなたは私と同じ……」 ザシュッ! キンッ! 舞の剣は少女に届かず弾かれていた。少女と刃の間には何もないのに……。 「みんなで遊ぶためには玩具は必要なものなの。生身で殺し合ったらあなたや香里さんが強すぎてゲームにならないでしょ?」 まあ、生身で強い者はゲームでも強かったりするけど……。 生身、元々が強い者は道具や戦略を駆使しなくても力押しができてしまう。 世の中は公平ではないのだ。 生まれ持った運動神経、体力、センスは、経験や熟練をも凌駕する。 秀才は絶対に天才には勝てない。 世の中そんなものだ。 「……回りくどい……」 シュッ! ギリリンッ! やはり、剣で少女を傷つけることはできない。だが、今度は弾かれる音ではなく、何かが削れる音がした。剣と少女の間にある何かを削ったのだ。 「ホントあなたは面白いわ……」 ドオオオオオン! 突然、見えない負荷が舞に襲いかかる。 「くっ!」 舞が剣を振り下ろすと同時に負荷は消滅した。 「確かに、あなたには玩具は必要ないかもね……」 「遊び……殺し合いがしたいなら……私が相手になる……」 「それは最後の楽しみにとっておくわ……じゃあ、また会いましょう」 「…………」 「ああ、そうそうその剣変えた方がいいと思う。もう使い物にならないだろうから」 舞は少女への警戒を解かぬまま剣に目をやる。 刃に細かい亀裂が無数に走っている 「あなたからしたらその剣こそ玩具よ。本物は本物を持つべきよ」 「…………」 「そんなに睨まなくてももう消えるわ……ホントつれないんだから」 言うと同時に少女の姿は消滅していた。 「………………」 舞は剣を鞘にしまうと、元の体勢に戻り、瞳を閉じた。 「…こんばんわ、神尾さん、ご旅行ですか?」 「あ、遠野さん……にはは、妙な所で会ったね」 まさか、こんな遠い雪国で同じ学校の同級生に会うとは思わなかった。 観鈴はなんとか平静を装うとする。 「遠野さんはどうして、この街に来たの?」 質問をされてぼろが出る前に、逆にこちらが質問をした。 これでなんとかごまかせるはずだ。相手がこの質問に答えたくないのなら、相手の方も同じ質問を自分にしてこないはずだ。 「…日本お米協会の会合がこの街でひらかれますので、参加しにです」 美凪はさらりと答えた。 焦りや動揺といったものはまったく感じられない。しかし…… (日本お米協会なんて組織ホントにあるのかな?) 内容が胡散臭かった。 「…では、私はこれで……神尾さんも良い旅を……」 美凪はぺこりと頭を下げると、人が一人入るぐらいの大きなトランクを引きずりなが去っていく。 「がお……」 相変わらず真意が、ペースが読めない人だ。 だが、今は美凪に構っている場合ではない。 「さてと……」 観鈴は気を取り直すと歩き出した。 自分には目的があるのだから、12人のヒロインを倒すという目的が……。 次回予告(香里&美汐) 「書いちゃったわね……」 「書いてしまいましたね……」 「ハピレスの配役考えてはずなのに……なんでできあがったのがこれなのよ?」 「月華やライカノは元ゲームをプレイしなおさきゃならないんで面倒なもので……『男らしく』カノン・レッスンでも始めてやる!……とか思ってたんですが、どうも配役が決まらなくて……秋子さんにアイドル役というのは無理がありすぎると思いませんか?」 「た、確かに……」 「かといって香里さんをアイドルにすると……妄想眼鏡委員長役をできる人がいなくなりますし……まあ、そんなことを迷ってるうちに……」 「いつのまにかコレを書いてたのね……」 「はい。というわけで、コレの話題に移りますが、元ネタは言うまでもなく平成仮面ライダー最新作です。ですが、仮面ライダーという単語は使っていません。ただ、カードとデッキで戦うという設定だけ使わせてもらっています」 「ほう……」 「なにせ、元ネタが話が謎だらけで決着がついてないどころか、13キャラ全員登場すら完了していないため、いつも(他の作品)のようなカノンキャラで原作をなぞるということが不可能なんです」 「なるほど……」 「だから、ストーリーの方は原作完全無視で、誰VS誰、勝つのは誰といった所は完全オリジナルというか行き当たりバッタリで逝こうかと……」 「『逝こう』というのが誤字じゃなさそうなのが怖いわね……要するにカノンキャラ+?(13人)でバトルロイヤル(ロワイヤルという単語(作品)は嫌いなので、ロイヤル)というオリジナルティがあるんだかないのか解らない作品なわけね?」 「トーナメントの方が良かったですか? 団体戦とか?」 「そんなにキャラ数居ないわよ……」 「ところで、これカノン・プリンセス2扱いにしてしまおうかというアイディアもずっとあったんですよ」 「あんですとっ!?」 「カノプリの続編として、カノプリキャラをさらにライダーに当てはめてと……この場合舞さんが占い好きキャラ(千影役だから)になったりして結構当てはめの都合が良かったりしたんですが……二重の役というのは解りにくいかなと思ってやっぱり辞めたんです」 「確かに解りにくいわね……」 「その辺はリナリナ猫瑞希で懲りてますので……後いっそのことライダーなんてやめて、ただ単にカノンキャラで戦い合うだけの話にしてしまおうかとも思ったんですが……」 「そうすればどうどうとカノンのオリジナル(ただの二次創作)SSになれたじゃないの」 「ファイナルベント!……とかカッコイイと思いませんか?」 「やりたかったのね……そういうのが……」 「はい……」 「まあ、カノプリではなく、シスプリキャラでライダーという素直な手もあったのですが、すでにやってる方がいたので辞めておきました」 「シスプリなら当てはめやすそうよね……占い好き(兄くん)も、みんな殺らないとイライラする(お兄様)みたいなキャラもいるし……」 「カノンだとなかなか当てはまらないんですよね、佐祐理さんだけは真っ先に一発で決まりましたが……だって、佐祐理さんってあいうイメージですよね?」 「純粋な(原作しか認めない)佐祐理ファンに殺されそうな発言ね……」 「で、香里さんの場合、北川さんの触角とサイのモンスターがそっくりと思った瞬間決まりました」 「なんで、あたしが北川君とセットなのよ?」 「一番違和感ないからです。北川×香里なんてカップリング好む人間もかなりいますから……北川×美汐や北川×佐祐理なんてマイナーなカップリングよりは主流ですよ」 「なんでわざわざあんな触角とくっつかなきゃいけないの?」 「私も嫌です。私達にシナリオがない(祐一の攻略キャラじゃない)ゆえの悲劇ですね……流石にメイン五人×北川というのは見たこと無いぐらいマイナーなようですから」 「あ、でもこの前、北川×名雪っての見たわよ」 「大志×あさひ並みの激レアマイナーですね(この前読んだこみパのアンソロで発見)……」 「……と、話ずれすぎね。そろそろまとめない?」 「はい、とりあえず、再現できる&再現したいストーリーだけは再現しようと思ってます」「あたしのファイナルベントや佐祐理さんが投獄されてる部分ね」 「はい。ですが、原作登場分のライダー全員当てはめ終わってしまったら、残りはオリジナルの技や設定でいくしかありませんから……」 「あたし=鎧、佐祐理さん=イライラ蛇しかまだ決まってないの? あ、名雪が一応主役か……蛙(けろぴー)だけど……」 「素直に考えると剣を持ってる舞さんが騎士なんですけど、カラス飼ってる観鈴さんの方が丁度いいモンスターがいる気がしなくもなくて迷ってます」 「まあ、この辺の話は元ネタ知らない人は気にしないでね」 「で、一番問題なのがもうすぐ死んじゃう弁護士です」 「なんでよ?」 「鍵のヒロインはもうすぐ死んじゃいそうな人ばっかりだからです!」 「………………」 「………………」 「…………笑えない真実ね……」 「一番素直に考えれば栞さんなんですが(もっとも死にそう)、重火器が似合わないんです、だから、別に死にそうにないけど、私(美汐)というのも有力候補なんです」 「真琴(死にそうというか消えそう)が弁護士であなた(美汐)がマグナギガ(重火器モンスター)ってのはどう?」 「それもアリです……気は進みませんが……」 「またアンケートとかする?」 「それが一番問題ないんですが……この前のアンケートで解ったように……あの投票量&ペースでは……」 「弱小サイトは投票やっちゃ駄目って悲しい真実が解ってしまったわよね……」 「毎回、投票で今後のストーリー決めて書くというのもやってみたいんですけどね……」 「今回はさらに票がこなそうよね、元ネタにというか、この作品に興味持ってくれた人限定だから……」 「まあ、もしかしたらやるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします」 「じゃあ、まあそういうことで……今回はこのへんで……またね」 「戦わなければ生き残れないです」 |