Kanon Princeess(カノン・プリンセス)
第3話「東京ナユナユで御奉仕するだお」


『東京ナユナユ』これまでのお話。
ごく普通の高校生だった名雪は、ある日、猫(ピロ)と合体してしまい、正義の味方『ナユナユ』になってしまいました。彼女は今日も、どこかにいる四人の仲間を捜しながら、エイリアンと戦い続けています。

「イチゴサンサンバージョンアップ!!」
みんなの力が名雪の手の中で一つになる。
「お礼にたっぷり御奉仕するだお〜。カノーン! イチゴサンデーチェキチェキサンライズ!!」

ヴァッ!

「が、がおっ!?」
吹き飛ぶ、金髪ポニーテールなエイリアン。
「これからも、地球の未来に御奉仕するだお〜♪」
第3巻につづく


「相沢……お兄ちゃん、お兄ちゃん」
「…………はっ!? 夢か……?」
祐一はゆっくりと息を整えると辺りを見回した。
間違いなく自分の部屋だ。目の前にいるのは妹の『香里』。『ナユナユ』なんてどこにもいない。
「……凄くうなされてたわよ。悪い夢でも見たの?」
「……ちょっとな……」
昨日、真琴から借りた少女漫画を寝る前に読んだのがいけなかったらしい。
それにしても……。
「名雪?」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや……」
名雪という名前が妙に頭に残っている。夢自体の内容はあまりよく覚えていないのに。
『フフフ……クライマックスだけ覚えているとは面白い記憶の仕方をしているね、兄くんは……』
「!?」
不意に脳裏に響いてきた声に反応し、祐一は周りを見回した。
しかし、祐一の傍には香里しかいない。
「お兄ちゃん?」
「なんだかな…………寝直すかな……」
「あ…香里が添い寝してあげようか……?」
「いや、それは遠慮する」
「……速攻で断らなくてもいいじゃない……」
(せっかく、人が恥ずかしいのを我慢して、元キャラ?に忠実に甘えてみたいのに……)
なんだかんだ言いながら、今の『設定』にかなり順応(慣れ)てきた香里だった。



「いいよね、雲は……何も考えずに空を流れて……」
風がそよぎ、抜けるような青空を雲が流れていく。
その下で、あゆはいつまでも遠くを見つめていた。
「あの雲……たいやきに似ているね……美味しそう……」
これが最後への引き(伏線)であることに、まだ誰も気づいていなかった。



「……本当に、いいんですか、真琴?」
「うん、未汐、お願い。あゆに勝つにはもうこれしかないのよ!」
「お金ちゃんと払ってくださいよ」
「……あぅ……後払いで……」
「仕方ないですね……真琴だから特別に待ってあげます」
「ありがと、未汐」
「…………」
(手段に夢中になって、目的を忘れていますね、真琴……)
そう思ったが、『面白そう』なので、黙っていることにした未汐だった。



「あははーっ ♪ あははーっ ♪ あははーっ ♪」
「………………」
「あははーっ ♪ あははーっ ♪ あははーっ ♪」
「………………」
「あははーっ ♪ 楽しいね、舞 ♪」
「…………(こくん)」
「あははーっ ♪ 待っててね、舞。佐祐理が魔法で用意を済ませるから ♪」
「…………(こくん)」
ガンガン! ドンドン! 
「あははーっ ♪ あははーっ ♪ あははーっ ♪」
「………………」
笑い声と魔法?の音だけが居間に響いてた。



「あははーっ ♪ あははーっ ♪ というわけでお待たせしました、祐…おにいたま ♪」
「お待たせたって……?」
「残りの妹登場です♪」
「なっ……」

ガシャアアアアアアアアアン!

「だお〜ちょっと遅刻したよ〜」
「フフフッ……」
窓を叩き割って飛び込んできた、眠そうな顔の青い物体。そして、その背後から悠然と歩いてくる眼鏡にお下げの大人な雰囲気の女性。
「1話ほど登場が遅刻したよ〜まあ、たいした問題じゃないよ〜登場の仕方が唐突なんてツッコミいれちゃ駄目だよ〜元ネタよりは普通だよ〜」
「フフフ……一人一人無理がないような登場の仕方をしていたら、私達の出番がいつになるか解りませんからね」
「でも、お母さん、意味もなく窓にわたしを投げつけるのは辞めて欲しいよ〜子供の虐待だよ〜ニュースになっちゃうよ〜」
「フフフッ……普通にドアから入ってきたらインパンクトがないでしょう? それに、今は母娘ではなく、姉妹ですよ、名雪」
眼鏡の位置を指で直しながら、微笑む、秋子。
「お母さん……それなんかキャラ違うよ……」
「いいんですよ。このキャラより、私のキャラの方が人気ありますから、口調と性格は私のままで……了承してくれますよね、名雪?」
眼鏡の奥の瞳が妖しく光る。
「う、うん、もちろんだよ、お母さん……」
了承しなければ、実の娘でも『狩られる』と名雪は直感していた。
「……酷いです。あんな派手に登場されたら、わたしが目立てないじゃないですか」
「栞?」
シャーシャーッ!といったローラーの音を響かせて、1人の少女が部屋に入ってくる。
「ハーイ! 祐一さ……あにぃ! 一緒にスポー…………げふぅ!」
「栞ぃぃぃぃっ!?」
栞は唐突に吐血すると、香里の目の前に倒れ込む。
「げふ! ごふごふ! う……」
「栞! 無理するから……」
「お姉ちゃん…………わたし、最後まで……笑っていられましたか?」
「ええ、もちろんよ……」
「よ…良かった…………(がくっ)」
「栞ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
香里の絶叫が響いた。
「あははーっ ♪ やりますね ♪ 命を捨ててまで目立つとは……でも、佐祐理の舞も負けていませんよ ♪」

パチン!

佐祐理が指を鳴らすと、テーブルに魔法陣が浮かび上がる。
「召喚、舞 ♪」
「シャギャアアアアアアアアアアアアアッ!」
「これが舞!?」
「あははーっ ♪ ちょびっと間違えました?」
「駄目ですよ、佐祐理さん。『正しい魔法陣』を書いてたら、『化け物』が出てくるのは当然ですよ」

バシッ!

秋子が僅かに手を振った瞬間、『化け物』が消滅する。
(お母さんは化け物より化け物だよ……)
「名雪……何か言いましたか?」
「何にも言ってないし! 何も思ってないよ! お母さん!」
「そう……それならいいのよ」
「あ、舞 ♪」
「…………」
魔女のローブのようなものを身に纏った少女が無言で立っていた。
「ごめんね、舞、佐祐理ちょっと失敗しちゃった ♪」
「……気にしなくていい……」
「これだけキャラが居ると……」
「ますます目立てなくなりますね、香里さん」
「あなたもね、天野未汐さん……」
「未汐でいいです。『姉妹』ですから、『お姉ちゃん』……それとも『アネキ』と呼ぶべきでしょうか?」
「アネキってのだけは辞めてね……」
「『アネゴ』の方がいいですか?」
「……普通に名前で呼び合いましょう……」
「そうですね……」


「つまり、全員妹なわけか……」
祐一は現状を受け入れる。受け入れなければ、自分を保てないから。
「これで打ち止め……全員だよな?」
「……そうね、全員ね、お兄ちゃん……(Kanonキャラは)」
「……ぼそ(あと3枚)」
「!?……今何か言った、舞?」
「別に…………でも、気を付けた方がいいよ、兄くん」
意味深に微笑むと、マントを翻して、去っていく舞。
「あははーっ ♪ 舞、完璧な演技ですよ ♪」
楽しげに笑いながら、佐祐理は舞の後を追っていった。
「…………」
「…………」
「……お兄ちゃん……頑張ってね……」
「………………」」
何を?と聞き返すのも怖くてできない祐一だった。



『次回予告』(香里&未汐でお送りします)
「次回、『Kanon新世紀/あゆ』最終回『あゆの奇跡』をお送りします」
「ちょっと……」
「なんですか、香里さん。ひとが真面目に次回予告してるのに…」
「その予告……ホント?」
「嘘をついて、私に何か得がありますか?」
「………………」
「台本通りに読んだだけです。仕事ですから」
「この作品って『カノン・プリンセス』よね?」
「ええ、ですが、ゾイドが人々の記憶から消え去る前に、ゾイドネタをやり尽くしてしまいたいのでしょう」
「だったら、別の作品にすればいいじゃない……」
「別の作品といえば、今回、K・P(カノン・プリンセスの略)の代わりに、『東京ナユナユ』を書こうとしたらしいですよ、作者」
「…………」
「かなり無理がありすぎる気がして、とりあえず辞めたみたいですが……」
「人気作品やはやり物は嫌いなくせに……」
「そうですね、なんたって香里さんが好きなぐらい世間のはやりから外れ……」

ガッ!

「次ぎは当てるわよ……」
「乱暴ですね。まあ、そんなわけで、次回あたり、『東京ナユナユ』に乗っ取られてるかもしれませんが……またです」
「そうね、じゃあ、またね」
「では、失礼します。次回……雪と空と……たいやきと」
「来週も見てね」


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