カノップラー名雪
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ヒロインに生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見る『地上最強の女(ヒロイン)』 『カノップラー』とは地上最強のヒロインを目指す格闘士(ヒロイン)のことである 「ねえ、来栖川綾香さん、わたしとスパーリングしようよ」 「君、自分が何言ってるのか解ってるの? 彼女はエクストリームの……」 「チャンピオンだお、それがどうしたお?」 「……あの女の子にグラブをはめてあげて」 「綾香さん、気は確かですか!? あんな子供の挑発を気にするなんて、綾香さんはチャンピオンなんですよ!」 「葵! あたしはそれ以前に『来栖川』なのよ! 来栖川の歴史に挑まれた戦いから背を向けた記録はないのよ。例え相手が大国であろうと、女子供であろうと……」 「来栖川?」 「かって、チンギスハーンさえも恐れたといわれる葉っぱ史上最強の金持ち一族のことだよ。君ホントに大丈夫?」 「だお ♪」 「あなた、名前は?」 「名雪だお、水瀬名雪」 「では、始めましょうか、戦士(ヒロイン)名雪」 ドカアアッ! 「だおおおっ!?」 「あのパンチ、綾香さんは本気だ……」 「……フ……フフフッ、最高だお、この人……さあ、戦争を続けようだお」 北川は港の倉庫街にやってきていた。 「ここで何を?」 「出入りですよ」 「出入り? 俺は川澄工業の二代目に会いと言っただけで……」 「北川さん、うちの二代目が女子高生ということだけで腕っ節をお疑いなようなのでね、それならとにもかくにも見てもらわなければ話にならないと思いましてね」 「組織同士の抗争もすっかり様変わりしましてね……組の代表者が一対一でケリをつけるのが最近の流行りです。まあ、これも合理化って奴ですか」 「しかし、川澄さんは?」 「すぐに参ります。なんせ、うちの代表は二代目自らが務めますからね」 倉庫の中にはすでに数人の男達がいた。 「えらく遅かったですね。さっきからうちの代表が待ちくたびれてますよ」 「代表、どっかでみた顔だな?」 「ええ、齋藤君はプロです」 「久瀬、お前、組の代表者同士って規約を忘れたんかい!」 「例え三日間でも生徒会役員は役員です。ようはここ(頭)ですね」 久瀬は笑うと、自分の頭を指さす。 カツン! カツンカツン! 静かな足音と共に、ゆっくりと舞が姿を現した。 「これが15歳……川澄舞か……」 北川は舞の放つ殺気と威圧感に圧倒される。 「川澄さん、あなたとはだいぶゴタゴタしましたが、きっちりケリをつけましょうか。あなたの勝負運を占ってさしあげましょう、1枚どうそ」 久瀬はトランプの束を差し出す。 舞はトランプの束を全て掴んだ。 「全部取らないでくださいよ。やめ……」 ドカアアアッ! 舞に蹴飛ばされた久瀬は一瞬で気を失った。 「会長! 駄目だ、のびちまってる……」 「……ん!」 舞はトランプの束をチョップ(手刀)で真っ二つにする。 「相当な切れ味がなければこんなことはできない……」 「齋藤、やっちまえ!」 齋藤が舞に襲いかかった。凄まじい拳のラッシュ、舞はかわそうとすらしない。 「どうしたんだ殴られぱなしじゃないか、反撃できないのか?…………狙っているのか……」 「……んん!」 ベシィ! 舞のチョップ(手刀)が脳天に炸裂する。 「ツッコミ(チョップ)だ!……スピードの差を補って余りあるツッコミが生み出す破壊力だ……」 「…………!」 舞は左手で齋藤の右腕を掴んで固定すると、右手のチョップを叩きつけた。 ザシュッ! 「斬った!?」 「うがあああああああああああっ!?」 ドオオオオン! トドメのアッパーカットがきまる。 床に倒れ込み、すでに戦闘不能の齋藤に、舞がゆっくりと近づいていく。 そして、 「うぎゃあああああああああああああああああああっ!」 齋藤の絶叫が倉庫に響いた。 綾香のジャブの激しいラッシュが続く。 「(良く持ちこたえている……あなたは立派な戦士よ……だが、あたしには勝てない!)」 ドカアアアアアン! 「……だお!」 「踏みとどまった!?」 「(動け……)」 「綾香さんの攻撃をかわした!?」 「(動け……打ち倒されたくなかったら、1秒だってじっとしてたちゃ駄目だお)……だおおおっ!」 名雪はロープを利用したジャンプで、綾香の首の上に乗っかると、拳の雨を降らせた。 綾香の回想シーンスタート。 数年前のモンゴル? 狼の群に囲まれてる来栖川姉妹。 「…………」 「姉さん! あたしから絶対離れないでね!」 「…………こく」 「狩りの獲物が少し増えるだけよ!」 ドカッ! 「勝てる! あたしの戦力は明らかにこいつらを上回ってるわ!」 ドカッ! バキキ! ドオオッ! 「買ったわ、姉さん ♪……ところで狼って美味しかったけ?」 回想シーン終了 「敵を感じ取るのよ……そうすれば全て見える!」 バシィィィン! 綾香の最高の一撃が名雪をマットに沈めた。 「完全に気を失っている……タンカだ!」 「坂下さんの時より数段気合いが入ってましたね」 「戦士(ヒロイン)としての礼儀よ……」 「鍵風……といった所ですか……」 倒れている名雪を見て、葵は呟いた。 「川澄舞? 可愛いらしい名前ですね」 「誰に聞いても、今もっと強い喧嘩師は川澄をおいていないと口を揃えて言います」 「名雪の相手になるのかしら? あの子は超A級のトータルファイターですよ、ただ喧嘩が強いだけでは相手として役不足ですよ」 「この目で見ました。川澄の最大の武器はツッコミです。その破壊力は思い出すのもおぞましいぐらいです」 「ツッコミ? 面白そうですね、気に入りました……名雪にぶつけてください」 「解りました」 カチャ! 電話を切ると秋子はけだるげな表情で呟く。 「我が子を極道と戦わせる母親……そのくらいの愛情でいいですね、母親なんて」 秋子はどこか自嘲的に微笑んだ。 「お母さん……」 車から降りた秋子はゆっくりと名雪に近づいていく。 「わたしのやり方でやるって決めたの。誰にも文句は言わせないし、お母さんのジムにも戻る気はないよ。何もかも一流でもわたしには……んっ!?」 秋子は自分の唇で名雪の口を塞いだ。 「強くなりなさい、名雪。私のように、もっともっと……」 それだけ言うと、秋子は車に乗って去っていった。 「半端じゃ勝てないお……パワー、スピード、テクニック、全て最初から作り直さなきゃ、あの女には勝てない……」 キャンプ用のリュックに荷物を積めていく、名雪。 「忘れ物無しだお」 『山籠もりに行きます、名雪』 と書いた置き手紙を残し、 名雪は自分の体の何倍もでかいリュックを背負って、雪山に登っていった。 次回予告(香里&美汐でお送りします) 「戦った、そして負けた。敗北は少女の闘争心にさらなる火を灯す。もっと強い相手、もっと熱い戦いを求めて、夜の闇に蠢く獰猛な魔獣に挑むべく……少女は睡魔の果てに強大な光りを見る……次回『ものみがおかの妖狐』」 「以上、次回予告はこの作品もまた出番が無さそうな美坂香里さんがお送りしました」 「……あんただって、他人のこと言えないでしょ……?」 「私の出番はきっとすぐにあります、香里さんと違って」 「……まあいいわ……それより、何よ、これ?」 「何といいますと?」 「なんでこんな予定表にもなかった番組がいきなり始まってるのよ! 猫ライドはどうしたの!?」 「飽きたから(反応無いから)辞めました」 「……それですますつもり……?」 「過去にとらわれてはいけません。常に未来に目を向けなければいけません、香里さん」 「……まあ、猫ライドはともかくとしても、この前のKP内の新作じゃなくて、なんでまったくの新作なのよ?」 「実はこの作品は、KP開始の頃からずっとアイディアとしてはあった(凍結中)んです」 「そうなの?」 「ええ、ただ二番煎じ、三番煎じ、つまりすでにどっかでやられそうな作品だから辞めておいたんです」 「そもそも、カ○ソで使われてるしね……」 「ええ、ですが……刃○を見ているうちにどうしても書いてみたくなったそうです」 「……で、もしかしてこの作品まだ続けるの?」 「ええ、クレームでも来ない限り、反応無しでも『もうちょっとだけ』続けます」 「……『もうちょっと』……微妙な表現ね……」 「書きたくて仕方ない(飽きるまで)間は書くということです」 「……まあ、そんなわけで今回はここまでね」 「ええ」 「じゃあ、またね。例によって次ぎの作品が何か解らないけど……また会いましょう」 「小さな恋と冒険の物語です」 |